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いまこそ実効ある福祉人材対策の具体化と実施を

 政府は、介護人材を含む福祉人材確保対策の在り方について、検討を行う福祉人材確保対策検討会を6月に立ち上げました。そして7月には、検討会の議論を踏まえた「介護人材確保の方向性について〜中間整理メモ〜」(以下「整理メモ」と記載)が検討会に示されました。

 検討会に提出された政府の資料からも福祉職場の人材不足が深刻化している実態とその背景にある課題が浮き彫りになっています。例えば常勤労働者の離職率が産業平均では11.5%なのが、介護職員では23.4%と倍以上の実態になっています(2012年度)。その為従業員の過不足の状況も、施設介護職員で「大いに不足」と回答した事業所は2010年度10.4%から2012年度13.9%と増加しています。その背景についても、平均賃金では全産業と比べて勤続年数が短いことも反映して約10万円低い実態が明らかになっています(2013年調査)。同様に「職場を辞めた理由」(介護福祉士:複数回答:2012年度調査)でも、トップは「結婚・出産・育児」(31.7%)ですが、「事業所の理念」、「職場の人間関係」のあとに「収入が少なかった」(23.5%)、「心身の不調」、「労働時間・休日・勤務体制があわなかった」、「腰痛」とつづき、低賃金と過酷な労働によって退職に追いやられている実態が明らかになっています。

 以上、政府の調査からも人材不足の背景にある課題が浮き彫りになっているにもかかわらず、「整理メモ」では、介護の魅力を現場から発信しイメージアップをはかること。事業者が「経営力・採用力の向上」を図ることや「経営理念の『見える化』や給与体系の整備など」の採用戦略を持つよう促すなど、人材不足の背景にある課題に応える内容にはなっていません。

 厚労省は2007年8月、福祉人材の安定的な確保を目的に「福祉人材確保指針」(注)を改定しました。その中で「就職期の若年層を中心とした国民各層から選択される職業となるよう、他の分野とも比較して適切な給与水準が確保されるなど、労働環境を整備する必要がある」と指摘していました。今日解決をみない福祉現場の人材難を解決し、国民の福祉を実現するためには、この指摘に基づき賃金の引上げ、職員配置基準の改善等につながる財政措置も含めた国の抜本的な施策の改善こそ喫緊に求められています。

 (注)「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」