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オリンピックと社会保障!

 ロンドンオリンピック女子サッカー決勝戦の観戦で日本中がねぼけまなこの中、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案が可決成立した。

 この間、連日のメダルラッシュと異常とも言える「いじめ」報道が新聞マスコミを席巻していた。ジャーナリスト堤未果氏の『マスコミが報道しない真実』という言葉が蘇る。

 さてロンドン五輪の閉会式である。翌日の新聞ニュースではほとんど取り上げなかったが、ひときわ異彩を放った場面があった。

 青く光る照明の下、無数の病院のベッドが現われ、医師・看護師と患者役の子どもたちが踊る。そこに光り輝く「NHS」という文字が浮かび上がった。

 NHS(国民保健サービス)は、1948年から始まった無料医療制度のことで、「揺りかごから墓場まで」と福祉国家として有名な英国の社会保障の核になる制度である。

 閉会式の総合演出を担当したダニー・ボイル監督は、「誰でも平等に医療が受けられることは、英国社会の核となる価値」と語る。

 対してアメリカではオバマ大統領が2010年に永年の悲願である国民皆保険制度を成立させたが、各州が反発、26州が連邦政府を訴え、フロリダでは違憲判決まで出された。皆保険制度の実効性は大きく揺らいでいる。

 アメリカでは病気に罹ることも自己責任で、皆保険制度は忌み嫌う社会主義的なものであり、モラルハザードを起こすという思想がいまも支配的である。

 日本の医療も「国民皆保険」が実現して50年が過ぎた。保険料を払っていれば初診料100円で医療を受けられた時代から、今や3割負担になっている。

 増税と同時に成立した社会保障制度改革推進法では自助・共助が強調され、社会保障からの公費引き上げが狙われ、生活保護不正受給者の摘発強化が謳われる。

 五輪閉会式で自国の社会保障を誇る同じ時期に、社会保障をなし崩しにしようとする国。もし日本で五輪が
開催されれば、保険制度を自慢する閉会式など思いつくのだろうか。