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勇敢で美しい国〜ベトナム

 「女性が働きつづけるのは当たり前、妊娠・出産して仕事を辞めることなど考えられない」ベトナム・ホーチミン市幼児学校の教師たちが口をそろえる。

 2月にベトナムの労 働運動と保育事情を学ぶため、全国福祉保育労結成25周年事業ベトナム交流ツアーに参加した。

 冒頭の言葉は、市内の幼児学校(幼保一体施設)との懇談での発言。ベトナムでは当たり前の国民意識だそうだ。日本とよく似た儒教、佛教に基づく宗教観を持っているはずなのに少なからず驚いた。「日本と違って貧しいからよ」と先生方は明るく笑っていた。

 幼児教育の目的の中に「審美眼の発達」また「祖父母や父母、目.上の人を尊敬」「勇敢で美しいものを愛する」などがあり、日本と共通しつつもベトナムの宗教観と独立運動の歴史がにじむ興味深いものであった。

 ベトナムの幼児教育の普及率は近隣東南アジア諸国のなかで群を抜いている。「子育てを社会全体で担う」という意識はベトナム人に深く浸透している。

 お茶ノ水大学の箕浦康子教授の報告によれば、北ベトナム革命政権の政策に深くかかわっていると言われている。ホーチミンが率いた革命政権は、第2次大戦敗戦により日本車がベトナムから撤退した直後に誕生した。

 革命政権は、女性の生産、社会活動を奨励し、そのための幼児教育充実に力を注いだという。「森の保育所」と呼ばれ、ベトナム戦争時には女性の戦闘員や物資運搬入のために保育所がさらに拡充していった。南北統一後、その思想は新しい国家に引き継がれている。

 金曜の夜、若者が公園で恋を語っている。道端に椅子を出し老人と子どもが食事をし、語り合っている。

 少し前に日本人が忘れてしまった光景が広がっている。

 ベトナムは豊かではないが、さりげなく優しく、なんとも居心地の良い思いをさせてくれる国であった。

 幼児教育にも民営化が著しい。日本が高度成長を成し遂げたように、ドイモイ(市場化)政策のベトナムも同じ道を歩くのだろうか。