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放射能はだれのもの?

「無主物」という言葉を初めて知った。

「無主物」とは、空中に漂う霧や海洋で泳ぐ魚のように誰の所有物でも無いとの意味。民法239条「無主物先占」では漁業権を侵害しない限り捕獲した魚等の所有権を認めるもので、国際法上どの国にも帰属していない土地を他国より先に占有し、自国の領土とする事も含まれる。

1月に開催した全労連評議員会で青森県代表から原発事故を起こした東京電力を強く批判する発言があった。

昨年の8月、福島第一原発から約45km離れた二本松市の「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」が東京電力に対し、セシウム汚染の除去を求めて仮処分を東京地裁に申し立てた。この裁判で「放射能はだれのものか」法廷で争われた。

対する東電弁護団の主張は、セシウムなどの放射能物質を「もともと『無主物』であったと考えるのが実態に即している」のであるから「飛び散った放射性物質を東電が所有しているとは考えていない」「所有権を観念し得るとしても、既にその放射性物質はゴルフ場賜の土地に附合しているはずである。つまり、債務者(東電)が放射性物質を所有しているわけではない」。飛び散ってしまった放射性物質は、他人の土地にくっついたから、自分たちのものではない。前述した「無主物」の概念を適用すれば、あなたの土地にあるからあなたの占有物です、嫌なら自分で除去しなさいと言っているようなものである。

こんな無責任な主張がまかり通るのか。一般社会に置き換えても、子どもが考えてもおかしいと分かる。週刊現代で、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は「もともと東電がウランを買ってきて所有し、それを核分裂させて生成されたのが、セシウムなどの放射性物質。れっきとした東電の所有物とみなすべきです・・・」と強く批判した。しかし、東京地裁(福島政幸裁判長)は、「除染は国や自治体が行うもの」だから、東電はやるべきではない、だから申し立ては認められない、と決定した。セシウムは誰のものか。