■組合の主張・焦点■ 戻る

極めて危険な「参加型社会保障」

菅首相が所信表明演説で示した「強い社会保障」。201O年版「厚生労働白書」では、消費型・保護型社会保障から、参加型社会保障(ポジティブ・ウェルフェア)に転換していくことが打ち出された。これまでの社会保障を、お金やサービスを一方的に給付、消費された後は何も生み出さないネガティブなものとし、これからは経済成長の基盤を作る投資と位置付けている。

今回の白書で注目すべき点がある。「新成長戦略」の柱として子育てサポートが強調され、新たなマーケットと雇用の創出」として「非施設型などの〜子育てシステム」とあり、「参加型社会保障の福祉」では「訪問型など多様な保育」とある。さらに地域社会のイメージ図では「訪問型保育拠点」から「訪問型保育サービス」の派遣が図案化されるなど、「訪問型保育」が一貫して強調されている。「白書」で、待機児解消のために保育所の増設ではなく訪問型をことさらに重ねて提唱している狙いはどこにあるのか。

今後、施設整備に金は使わず、介護保険で試し済みの安価な労働力として登録型ヘルパーと同様なシステムを保育に待ち込むのでないか。保育関係者が集団保育実践で培ってきた子どもの発達保障の視点などみじんもない。

目を転じれば、障害者福祉にも「訪問型サービス」があり、訪問型介護・看護も同様に「訪問型」が強調されている。いま提案されている介護職員による医療行為が拙速に進められようとしているのも、こういった制度構築をめざす中で出てきているのかも知れない。

ポジティブ・ウェルフェアが主張する社会保障の充実が経済成長に役立つという視点は間違いではない。しかし「資本主義的な利潤を生みだす投資」に成りうるか、といえばそれはその想定自体が憲法違反である。

子育てや、障害者支援、老人福祉などは国や自治体の責任において公的責任が憲法で義務付けられている。社会保障の目的は経済成長であってはならず、あくまで、憲法25条の
生存権に基づき、国民の命と暮らしをまもることにこそある。