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キャリアパス制度の導入で人材確保ができるのか?

厚生労働省は、介護職員処遇改善交付金の要件として検討してきた「キャリアパス要件」を明らかにした。キャリアパスについては福祉人材確保基本指針の改定において「キ
ャリアと能力に見合う給与体系の構築等を図る」と初めて言及されたものである。

人材確保対策、すなわち働き続けることができ、専門性にふさわしい「適切な給与水準を確保」 するためには、国による横断的な給与水準を示し、その財源を税で保障することが不可欠である。

今回のキャリアパス要件が福祉人材確保の「新指針」で示されたキャリアパス制度の具体化であるのならば、福祉労働者の賃上げを目的にした「処遇改善交付金」とリンクさせ、その内容によって補助金額を減額するような導入の仕方には大きな問題があり反対である。

事業所ごとに限定したキャリアパス制度の創設は、人材不足を事業所の問題に矮小化させるだけではなく、人事考課・能力給の推進、職員間の差別・分断の表面化など、福祉
人材不足にいっそうの拍車をかけるものである。改めていうまでもなく、福祉労働は集団労働であり、個別・個人評価を導入し自己責任を推進するシステムの構築は根本から間違っている。福祉労働者の人間性が利用者を引きつけるのである。マニュアル型の物言わぬ労働者をつくりあげるシステムであっては断じてならない。

現在の深刻な人手不足の最大の要因は、報酬単価の大幅な引き下げや常勤換算方式の導入などによる福祉労働者の低賃金化、そして急激に進んだ非正規化にある。経験も研究の機会も保障されない、賃金も上がらないなど、その経験が全く評価されず、なおかつ不安定な雇用により激しく流動化していることが人材不足となって現れている。

実態改善につながる施策こそが必要である。改めて述べるが、福祉労働者の人材確保対策を進めるためには、労働者の賃金の社会的な基準の制定、適正な職員配置や正規職員
化、そのための税による財源保障など抜本的な施策が必要である。