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「応益負担」と「応能負担」

社会福祉・社会保障制度は「所得の再分配」を基礎に成り立つ制度である。「所得の再分配」とは生産過程での「資本と労働の取り分」や個々人の所得格差に対し、低所得層に公金を使って国民生活の水準を少しでも引上げる社会的制度である。

生産力拡大と経済の発展とともに、国民各層の貧富の格差是正を目的とした「所得の再分配」は社会発展の法則にそい、西欧諸国の社会保障制度はその典型である。

ところが今日、わが国の社会福祉・社会保障制度にたいし「所得の再分配」を否定する逆流が、政府・財界から強力に推しすすめられている。攻撃の特徴は「所得の再分配」にたいし「競争原理」を対置し前者を「怠け者の論理」と非難するとともに、後者を「努力した者への褒賞」としてほめたたえる風潮を意識的・社会的につくり出してもいる。

具体的には、社会福祉や社会保障に「応益負担」が当り前のように言われるようになった。「応益負担」とはサービスの利益に応じて負担も増やすという考えである。逆に言えば、負担に応じたサービスしか受けられないのだから、低所得者は社会福祉から排除される。

ところで、「応益負担」にたいし「応能負担」という考えがある。「応能負担」とは経済能力に応じた負担を原則とする考えである。この考えは「所得の再分配」=社会保障制度の基礎である。

「応能負担」を「応益負担」に置きかえる政府・財界の攻撃は、いまや社会福祉・社会保障だけにとどまってはいない。それは税の使い方だけでなく、税の集め方にまで貫徹しようとしている。今日、政府・財界のすすめる「税と社会保障制度の一体的改革」は法人税や高額所得者の減税をすすめる一方で、消費税率の引上げをねらいとしている。「消費税」はそれが生活にとって最低必要物であったとしても、「受益」として国民が一律に課せられる「応益負担」を原則とした税である。「応益負担」か「応能負担」か、どちらの考えに立つかは国の有り様を、根本から問う重要課題である。