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介護・福祉労働者の劣悪労働条件を問う

厚労省は、登録ヘルパーの法的身分を便用者との「雇用契約」関係にあり、労働基準法の対象労働者であるとの通知を出した。このような通知が出された背景には、登録ヘルパーの身分が「請負契約」であるかのように取扱われ、訪問家庭への移動時間が労働時間として認知もされず、賃金が支払われていない現実があるからである。

登録ヘルパーは、ケアマネージャーのつくるメニューにもとづき、サービス提供責任者の指示監督の下にヘルプサービスに従事する。「請負契約」にある裁量権など、ヘルパーはもっていない。このような労働実態からすれば、厚労省の対応は「適切」どころか遅いというべきである。

ところで、移動時間に賃金も出さない介護事業者は、労働者をギリギリにまで働かせ搾りとる世界に悪名をはせる、現代日本資本主義企業の一員と見なすべきなのであろうか。たしかに国民の福祉や介護の要求を「市場」と見なし、全国チェーンとして事業展開する大手企業の中にはこのような一面がある。しかし、その大手企業すらが目論見が外れ全国各地で事業から撤退したり、地場の中小介護事業者が倒産する状況を見たとき、登録ヘルパーの劣悪労働条件は事業者だけの責任とは言いがたい。

では、いったい何が問題なのか。介護事業者の経常も安定し、はたらく労働者も働きがいと生活維持が可能となり、国民が安心できる介護保障はどこに求めればよいのか。

答は、いたって簡単である。保険料か税負担かの論議はあっても、根本は公的制度として福祉や介護のコストをどのように考えるかである。また、福祉や介護のような人的サービスのコストは、人件費をどのように見積るかが鍵である。「低コスト=低賃金=低サービス」が、わが国の福祉事業の実態である。

このようにいうと、「高サービス=高コスト=高賃金」論が登場しかねない。そうではあっても、やはり「経済大国」日本の福祉・介護の課題は、税のあり方・政治の姿勢をどうしても問わざるを得ない。