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福祉労働の本質をゆがめる人事考課

大阪府の「公私間格差是正」制度再構築の2005年度実施予定が近づくにつれ、民間福祉職場での賃金体系の具体的な改定案が法人から出てきている。
「04国民春闘」では、人件費財源をどのように公的保障させていくのかという労使の共同課題のある一方、職場での賃金体系の組立てについても重要な課題となっている。
福祉保育労大阪地方本部は「職能給」「成績給」「能力給」など、どのような表現であれ、人事考課をともなう賃金体系には反対する。人事考課とは、職員の能力や毎日のしごとの結果を評価することであり、どのようなシステムや方法がとられようと、職員評価の最終は管理者・経営者がおこなうことになる。
はたして、職員は上司の評価を無視して、毎日のしごとに勤しむことができるであろうか。いったん自己以外の外部評価が存在し、それが賃金や将来の職場でのポジションが決まるとなれば、心のどこかに評価を意識した労働がおこなわれるのは、人間としてしごく当然のことである。しかし、このような福祉労働は対利用者との関係においては、はなはだ邪道である。福祉労働は利用者に真摯にたちむかい、そこに求められるものは無償のものであって、名誉や評価などは無縁のものである。
だからこそ福祉労働者は自発的に、みずからの専門性の向上を求め研鑽し追求もする。福祉労働の視線はつねに利用者にそそがれ、その視線が上司の評価にむけられるとするなら、本当の利用者の立場にたった福祉労働など存在しなくなる。
福祉サービスが市場原理になじまないと同じように福祉労働には競争原理はなじまないものである。人事考課の先にあるものは、管理者の評価を前提に、結局は労働者同士の競争に行きつくものになる。個々の労働者がみずからの能力を最大限に発揮し、それらが有機的に組合わされ集団的に発揮されるのが、福祉労働であり福祉サービスである。
利用者にとって、福祉労働者の賃金への人事考課の導入は、害こそあれ益は何もない。