困難さをはねかえす運動を、職場と地域に根ざしてとりくみましょう
<1> 小泉『構造改革』は、「三位一体」補助金カットで国の赤字を自治体に転嫁し、全国的に地方自治の破壊をよんでいます。また、「社会福祉基礎構造改革」による住民の自己選択を口実にした福祉の契約制度は、公的福祉制度を破壊し住民負担をいっそう重くしています。今日の福祉職場に表われたきびしい現実は、地方自治破壊と福祉制度解体の両面からの攻撃から生じてきています。
小泉『構造改革』の特徴は、大銀行や大企業には手厚い保護をおこない、これまでの社会的規制をゆるめていっそうの競争原理のはたらく経済社会づくりにあります。これは新自由主義を基本とするもので、競争原理こそが将来の日本をつくる活力だとして“弱肉強食”社会の姿をあらわにした考え方です。
この新自由主義の『構造改革』は、なにも小泉「自・公」連立政権だけの特許ではなく、「二大政党」論の他方にある民主党も同じ立場にたち、お互いに規制緩和と『構造改革』を競いあっています。新自由主義の『構造改革』がつづく限り公的社会福祉制度は破壊され、国民の権利としての福祉はないがしろにされる一方で、福祉労働の変質と労働条件はますます劣悪になっていきます。
この点で、私たちは新自由主義的『構造改革』に対峙した運動が重要となっています。
<2> 新自由主義の『構造改革』の潮流が強まるもとで、社会福祉は住民・国民だけでなく、福祉政策(行政)や経営体、従事する労働者に激変ともいえる大きな変化をもたらしています。<1>公立保育所や病院など自治体の公的サービス部門の民間払下げ、<2>利用者住民の貧富の差による受ける福祉サービスの格差、<3>民間営利企業の社会福祉事業への参入と社会福祉法人経営の不安定化、<4>福祉労働者のいっそうの低賃金化と非正規労働者の急増など、これらの事柄のすべては小泉『構造改革』から発信されたものです。
公的福祉制度の破壊攻撃でとくに注意しなくてはならないことは、福祉労働者の労働条件が劣悪になればなるほど住民への福祉サービス水準の低下につながることです。この点では、つねに住民・利用者の福祉サービスと福祉労働者の労働条件を表裏の関係として位置づけ、運動を組み立てることの重要性です。
<1> きびしく忙しい毎日の仕事のなかで、ともすると、組合員は職場内の諸問題を労使関係での解決こそが、組合運動の課題のすべてであるかのようになりがちになります。
たしかに劣悪な労働条件や仕事の複雑・困難さは、日常の職場で直接に感ずるものです。しかし、賃金問題を始めとした労働諸条件の改悪や劣悪さは、経営をとりまく国や自治体の制度改悪が主要な条件となっていることを明確にする必要があります。
また、日常の複雑・困難化する仕事は、長期の不況をはじめとした社会諸問題の深刻な府民生活・福祉問題への反映です。
国の公的福祉制度破壊があからさまにすすむ今日、当然、政府にむけての運動は重要です。同時に公的福祉制度の最先端にある自治体行政が、住民の生活と福祉を守るトリデとなっているのかどうかは、住民と福祉労働者には直接的に影響します。とりわけ、大阪府が2005年をメドに「福祉再構築」を始めようとしているのを見たとき、自治体闘争はいっそう重要になっています。
<2> 自治体行政が住民への福祉サービス提供事業から撤退しようとしている時、社会福祉法人の非営利性と経営安定化は、福祉関係者の課題だけでなく府民的課題です。この点では保守的な社会福祉法人経営を含め、課題と要求の一致にもとづく「労使共同」のとりくみを労働組合は率先してとりくむ必要があります。
福祉保育労大阪地方本部は、職場や地域で「労使共同」の運動を追求するとともに、福祉業界との懇談や社会福祉経営者同友会との共同行動などを積極的にとりくんでいきます。
あわせて、公的福祉制度の拡充にむけて大阪自治労連や、保育連、障連協をはじめとした「障害6者懇」等の市民運動団体とも共同を強めていきます。
<3> 制度改悪や補助金カットを原因として職場でおきてくる労働条件の低下問題については、原因の結果が法人にどのように現れてきているのか、具体的な説明と資料の提示を経営に求めていきます。そして、経営として最大限の責任を要求するとともに、根本的な原因について労使の共通認識を深め合い、自治体や住民・利用者への働きかけを共同してとりくみ、職場や経営の将来見通しについて協議を求めていきます。また、具体的な労働条件問題については、公正・公平・透明性を原則に柔軟に対応していきます。
これらのとりくみを通じて、自治体や国の福祉制度拡充運動を労使共同のとりくみとして発展させていきます。
<1> 昨年の総選挙と今年7月の参議院選挙の結果は、自・公与党と民主党の「改憲2大政党」制をつくりだしました。このような下で、世界に誇る「戦争放棄」を定めた憲法9条を軸とした憲法改悪は、いよいよ具体的課題として登場しています。福祉保育労大阪地方本部は憲法をまもる「9条の会」や大阪憲法会議に参加し、憲法改悪阻止のとりくみを最重点課題の一つとして組合員総ぐるみの運動を組織していきます。
<2> 自・公与党と民主党の年金問題での「3党合意」は、2007年度までに年金制度の再度の見直しに際し消費税率引き上げをセットにして検討することを決めています。また、2005年度に介護保険の抜本見直しにあたり、障害者支援費制度を将来的に介護保険に併合することを課題にあげ、2007年度にむけて社会福祉・社会保障制度を根底から改悪する作業がはじまっています。
憲法の平和原則の象徴である9条と生存権保障を定める25条は、相互に関連し合う重要な条文です。この点でいえば、今日の憲法「改悪」の動きは社会保障制度破壊と連動しており、あらためて『戦争か・バターか』のスローガンを再登場させています。
社会保障制度の一端をになう福祉労働者は憲法をまもり、平和と民主主義、社会保障制度の拡充を求める運動に積極的に参加し、とりくみを広げ強化していきます。
<1> 非正規労働者の急増や成果主義賃金(成績給・能力給)のひろがりで、日本の労働者全体の賃金水準は下がりつづけています。それに対抗すべき労働組合は、絶対数でも組織率でも年々下がりつづけ社会的力を弱めています。このような労働者をめぐる状況は労働条件の個別化を生み出し、このことがさらに労働組合を労働者から遠ざけています。そして、非正規雇用の急増や賃金の成績給・能力給は一般論ではなく、福祉労働者の間にも急速に広がりはじめています。
福祉労働者の絶対数がふえる下で福祉保育労大阪地方本部の組織化は、組織人員では増加傾向にありますが、組織率では福祉労働者総数の急増に追いつかず年々下がる傾向にあります。この点では、職場や分会、支部を単位に意識的な組織拡大強化のとりくみが、いちだんと重要となっています。とりわけ、非正規労働者の組織化は、大阪地方本部をあげてとりくみを強化する必要があります。
<2> 福祉保育労大阪地方本部の組合員の平均年齢は36.5才であり、組合員の半数以上は35歳未満です。また、男女比では74%が女性であり圧倒多数が女性労働者です。
組合員の構成状況をみたとき、職場に組合運動の経験を蓄積する困難さのある一方で、未知の可能性を無限にもっている若々しさをも秘めています。この若い組合員の無限の可能性を引きだすための学習活動は、組織拡大強化の中心柱の課題です。
大阪地方本部は支部や分会と協力し、意識的に組合活動家づくりを追求し、年度計画をもって組織の拡大強化をすすめます。このためにも本部・支部役員が先頭にたって若い組合活動家づくりにとりくみ、職場に根ざした強固な組合づくりをめざします。
当面する課題として、3,000人台の福祉保育労大阪地方本部づくりを目指し、行政や業界・個々の経営に社会的影響力をもった組織づくりを組合員総ぐるみでとりくみます。
<1> 中国特需により景気は回復しつつあるといわれますが、それは大企業や一部産業を中心にしたものです。今年5月の大阪の完全失業率は昨年平均の7.6%から6.3%へと下がってはいるものの、全国平均4.5%に比べ1.8%も上まわっています。自殺者についても6年連続全国で3万人をこえ、昨年は3万4千人に達しています。大阪でも経済生活苦を理由とした自殺は、一昨年にくらべ2.3倍にも増えています。
このような府民生活の深刻な暮しむきは、複雑で深刻な福祉問題をつぎつぎと生み出しています。
保育待機児は昨年に比べ、全国では過去最高の4万4千人をこえるまでになっています。この中、大阪は東京についで多く保育待機児は7,097人にもなっています。児童相談所への児童虐待相談件数は、昨年1年間全国で約1万8千件と年々増えていますが、その中で大阪は最高の相談件数となっています。
障害児者問題でも、少子化がすすみ小中学生全体が少なくなっているにもかかわらず、大阪では養護学級の在籍者が昨年比で610人、養護学校在籍者も昨年比239人と増えつづけています。金剛コロニーで入所待機者が300人いることが象徴するように、障害児者施設も引きつづき不足しています。ところで、政府は入所施設の建設抑制を打ち出す一方で、全国的には「脱施設化」論が広がっています。このような下で支援費は在宅事業の利用拡大で昨年は100億円、今年度は170億円の予算不足が生まれています。
生活保護世帯の多くは高齢者であり、2002年度の生活保護世帯は全国で月平均124万世帯に達しています。また、国民年金しか受給していない高齢者は全国で900万人もおり、平均受給額は月額4万6千円にしかすぎません。このような高齢者の暮しむきの中で、大阪での生活保護世帯は昨年末には10万世帯を突破し全国的にみても高い水準となっています。また、介護保険実施前に約7000人いた特養ホーム待機者は今では1万人をこえ、高齢世帯のきびしい生活実態をあらためて浮き彫りにしています。
とろこで、利用者負担にきびしい介護保険でも需要に対して財源が追いつかず、保険料や一部負担の見直しの検討や高齢者グループホーム建設の抑制が始まっています。
<2> 府民の切実な福祉要求の高まりや深刻な福祉問題に対し、国や自治体の行政は規制緩和と「社会福祉基礎構造改革」の名で受け止めないばかりか、企業を含めた民間への投げ出しをおこなっています。
このような下で、社会福祉法人をはじめとした民間社会福祉職場の労働条件はきびしさが増すばかりで、複雑・困難な福祉問題に十分に対応できるものとはなっていません。府的に福祉労働者数は増えていますがそれは事業所数の増加にともなうものであり、個々の職場での職員配置は低水準のままとなっています。また、職場によっては正規労働者を非正規労働者への置き換えがすすみ、非正規労働者の急増で利用者処遇も細切れ化するような利用者処遇の低下をおこしている職場もあります。
くわえて2004年度は大阪府「公私間格差是正」補助制度の激変緩和の最終年にあたり、これまでの府職員に準じた賃金体系が根本から崩れはじめています。そして、劣悪な労働条件のもとで、福祉労働者のメンタルヘルス問題が広がっています。
<1> 2000年の介護保険実施以降、社会福祉制度の改悪は、厚労省の「社会福祉基礎構造改革」と総務省の「三位一体」自治体補助金カットが一体となって自治体や福祉職場におしよせ、自治体・住民・福祉労働者・福祉経営等を分断する形の攻撃です。
具体的には、<1>公立保育所への保育運営費補助を撤廃し公立保育所の民間払下げの強化、<2>指定管理者制度の導入で「直営施設」や「公設民営」施設の民間払下げと低コスト化、<3>「幼保一元化」の名による保育コスト削減と父母負担の強化、<4>2005年度介護保険見直しによる新たな国民負担強化と介護コストの削減、<5>障害者支援費制度の介護保険への併合による障害者福祉制度破壊、<6>福祉市場化の下で営利企業との競争をめざした社会福祉法人の根本的な洗い直し等々、攻撃は様々な業種と分野にあらゆる方法を使ってすすめられています。
「国民みずから選ぶ」福祉制度と、声高に措置制度から契約制度に軸脚を切りかえた制度改悪は、今や「みずから選ぶ」ことから「自己責任」の強調に変ってきています。そして、社会福祉法人のあり方についても、「経営の自主性」の名で合理化・効率化が強要され、営利企業との競争にむけて「非営利性の範囲」の縮小が始まろうとしています。
<2> 大阪府は深刻な財政危機におちいり、2000年度末で借金残高は4兆74億円と年間収入の約4倍となっています。その最大の原因は、「大阪湾ベイエリア計画」などの巨大開発事業によるものです。ところが、太田府政はこれまでの施策の反省もないままに、大阪府が出資する「関空会社」はすでに累積1千300億円もの赤字があるにもかかわらず、引きつづき「関空2期工事」などムダな巨大開発事業をすすめています。他方で、府民生活に直接的に影響する福祉や、教育・中小企業対策の予算は容赦なく削ってきています。 このような大阪府財政と太田府政の姿勢の下で、2005年度から公私間格差是正制度を全面的に見直し、あらたな制度が発足しようとしています。
すでに明らかになっている最終原案では、<1>安定した人材確保と適切な施設運営のために「施設経営安定化の推進費」(約10億円)、<2>職員資質の向上と利用者本位の推進を目的とした「施設機能強化推進費」(約6億5千万円)、<3>新たな課題への対応のための人件費としての「入所者サービスの向上と地域貢献」(約10億円)、<4>これまで縮小・廃止した事業の復活やメニュー事業の見直しによる「アクションプログラム関連」(約20億円)というものです。このうち<1>〜<3>までが、これまでの公私間格差是正制度補助の直接的な再構築であり、予算総額は当初30億円は守るといわれていたものが26億円と4億円も下げられています。
再構築検討会には堺市や高槻市、東大阪市の担当者が傍聴にきていますが、大阪市からの参加はありません。大阪府は大阪市とはまったく協議していないといっており、この点では大阪市へのむけての独自のとりくみは重要となっています。
<1> 6月4日、政府は参議院選挙をまえににして『構造改革・骨太の方針第4弾』が出されています。そこでは、<1>「官から民へ」、「国から地方へ」の徹底、<2>「官の改革」の強化、<3>「民の改革」の推進、<4>「人間力」の抜本的強化、<5>「持続的な安全・安心」の確立等、5点の重点課題をかかげ、さらに重点施策として、<1>地域再生、<2>雇用政策・人材育成施策の新たな展開、<3>「新産業創造戦略」の推進、市場環境の整備及び発展基盤の強化を打ち出しています。
ここで強調されていることは、市場化路線のいっそうの展開であり効率性を軸にした公的部門の切りすてです。社会保障制度については、「持続的な安全・安心」の名で社会保障制度全般について一体的な見直しの開始を宣言しています。「国民の便利性向上、事業効率化にむけて、保険料の徴収体制
… を見直す」「増大する高齢者医療費の伸びの適正化」「保育については、…
利用者の選択を機能させ、サービスの向上について施設間の競争を促す方向で
… 推進する」等々、国民権利の抑制と切詰め、いっそうの競争原理と市場化の方向が示されています。
<2> 「骨太の方針・第4弾」と並行して社会保障審議会「福祉部会」では「社会福祉事業及び社会福祉法人について」の検討が始まっています。
ここでは「多様な供給主体との競合」の下での社会福祉法人のあり方が検討されており、公益・収益事業の拡大による財源獲得と規制の緩和などが問題となっています。あわせて建設補助金の存続や課税のあり方、また、経営の自律性から、基本財産を担保にしての借入金を認めることなども検討課題となっています。
福祉分野における雇用問題についても検討対象となっており、審議会に提出された添付資料でも、福祉関係者の給与水準は年令38.0(40.1)才、勤続年数8.0(12.1)年、所定内実労働時間数162(165)時間、超過実労働時間数4(13)時間、所定内給与額251,400(302,600)円、年間賞与その他特別給与額915,900(995,900)円と、カッコ内の全産業労働者水準と比べ低い水準をどうしていくのか、今後の検討が待たれるところです。
<1> 定数5議席減の下での2004年参議院選挙で自民党は、改選50議席にたいし当選者49議席、得票数でも昨年11月の総選挙から386万票も減らしました。これは明かに「小泉人気」のかげりであり自民党政治への国民の不信以外の何ものでもありません。自民党への反対票は、「何とか今の政治を少しでも変えたい」と民主党に流れ、民主党は改選38議席から50議席におおきく伸びました。
しかし、国民の願いとは裏腹に、民主党は小泉内閣と同じように『構造改革』路線をかかげ、年金制度の改正についても給付を減らす方向は自民党となんら大差はなく、国民負担を保険料値上げではなく消費税率引き上げでまかなうという内容です。この消費税率引き上げ案は、保険料による事業主負担増を避けるために財界も賛成しているものです。
後にふれますが、この他、憲法改悪や自衛隊派兵問題についても自民党も民主党も掲げる政策に大差はなく、国民の願いや要求とはおおきくかけ離れておりマスコミの誘導した「二大政党制」政治の矛盾は遠からず国民の前に明らかになってくることは必死です。
<2> 今回の選挙結果を見たとき、昨年11月の総選挙で自・公与党が大勝し、今回の参議院選挙でも自民党は退潮したものの、自・公与党連合の議席を合わせれば改選60議席を守りきり、民主党の勝利は共産党の激減を呑みこんだものにすぎません。
この点では、国会内のうごきだけに任せておくならば2007年の衆議院総選挙まで国政選挙はおこなわれず、自・公与党と民主党が同調するいっそうの『構造改革』の推進、憲法改悪と自衛隊問題、再度の年金制度の抜本改悪と結びついた消費税率引き上げ等々が、この3年間のうちに浮上することを予測しないわけにはいきません。その意味では、組合運動をはじめ、国民の側から攻勢的にどのような運動をつくり上げていくかが大きな課題となっています。
自民党は今回の参議院選挙で「憲法改正」を公約にかかげ、2005年には結党50周年を記念して改憲草案を発表するとしています。同じく民主党は「創憲」、公明党は「加憲」の名で憲法改悪を掲げています。
民主党や公明党の「創憲」「加憲」論は、環境権やプライバシー保護、知る権利等などを憲法の中に新しく書き加えるとしていますが、憲法「改正」の中心議題が第9条の「戦争の放棄」条項にあることは疑いのない事実です。
アーミテージ米国防長官は「日米安保条約にとって今や憲法9条は邪魔な存在」と、憲法9条をかえて自衛隊を軍隊として世界に出動することを公然と言っています。この点、民主党は「国連軍として自衛隊派兵を認める」としていますし、公明党は小泉内閣の「イラク戦争での自衛隊の多国籍軍への参加」の閣議決定に賛成しています。
また、いまアメリカ軍が韓国駐留軍を1/3に減らすなど世界的規模で配置換えをおこなうことと並行して、日本はすでに今年度からアメリカの「核の傘」の下で「ミサイル防衛システム」予算がつけられ新たな「防衛大綱」がつくられ、憲法9条の改悪を前提にした動きが始まっていることを十分に注意していく必要があります。
なし崩しの自衛隊イラク戦争への多国籍軍参加や急な憲法改悪の動きにたいし、大江健三郎や加藤周一など日本を代表する有識者9人の憲法改悪反対を呼びかけた「九条の会」(『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始める)は、アッピールを出して約1ヶ月間に670人以上の著名人や団体代表者等の賛同が広がり、憲法を守る新たなとりくみが全国各地に広がりはじめています。
大阪でも、「九条の会」の動きにあわせてこれまでの「憲法会議」を個人と団体が参加する運動団体につくり変えるとともに、在阪の著名人の呼びかけによる憲法をまもる運動の動きがはじまっています。
『改憲』は、国会議員の2/3の合意の上に、国民過半数以上の賛成が必要です。すでに国会では2/3以上の『改憲』勢力となっていますが、マスコミの世論調査では60%以上が『改憲』に反対であり、「9条改悪」に反対は70%に達しています。この点では、『改憲』のための国民投票法案を国会提出させない、たとえ『改憲』が国会決議されても国民投票で『改憲』を認めないという世論を今からつくる運動が重要となっています。
<1> 年金改悪法は国会で成立しました。成立後
の世論調査では7割の国民が反対しており、参議院選挙の自民党の敗北の大きな要因となりました。また、国会で論議もなしにサミットの中で自衛隊の多国籍軍参加を表明した小泉首相の軽々しさは、「人生いろいろ」発言とあわせ「小泉人気」急下降をよんでいます。重要な課題がいっぱい詰まった参議院選挙でしたが、「二大政党制」の流れとともに、過去4番目に低い投票率(53.18%)は少なくない有権者の中に「二大政党制」への拒否が含まれているのではないでしょうか。
自民党政治への不信が全国に広がるとともに、「二大政党制」が定着したなどとは決していえるものではなくまさに流動化しているのが今日の政治状況であり、この点をしっかりと見据えて今後の運動をとりくむことが重要となっています。
<2> 朝日新聞の調査では、障害者支援費制度の介護保険への併合にたいし、全国の半数以上の自治体が障害者福祉は介護保険になじまないと反対しています。たび重なる福祉制度の改悪や、国の赤字を自治体に転嫁するような政府の諸施策にたいし、全国各地の自治体から反発も生まれています。
福祉施策は自治体行政の中心柱の一つであり、身近な自治体行政をつうじて公的福祉制度が具体化されるものです。国と自治体の矛盾がいっそう明らかになっている今日、住民自らが保守・革新の枠にとらわれず自治体行政のあり方を見つめなおす機運が広がっています。この点では、あらたな公的福祉制度を地方行政からつくりだす条件が芽生えはじめていると言ってよいのではないでしょうか。
<1> グローバル(地球的規模)経済のすすむ下で、トヨタの年間1兆円の純利益にみられるような一部大企業の莫大な利益、東京三菱銀行とUFJ銀行の合併で資産保有高世界1位の銀行出現等々、その一方で中小企業倒産や国民の暮しむきでの貧富格差の増大など、これまで経験しなかったような事態が次々おきています。
今日の産業再編と経済変動は、これまでのような企業内労働組合運動や正規労働者主体の運動にたいし、企業の枠をこえた組合づくり、非正規労働者の組織化と運動のあり方、年金をはじめとした社会保障や社会的ルールの規制を求める運動など、連合・全労連を問わず労働組合運動の新たな方向性の模索と必然化させています。福祉保育労の参加する全労連では、地域を主体とした運動の構築が始まっており、同時に行政にむけた民間労働組合の「公契約」運動や最賃審議会にむけての運動の強化がはじまっています。
<2> 全労連は一昨年の大会で「組織拡大基金」の創設を方針化しすでに今年4月から全国的に「全国オルグ」を配置し、産別として大阪には生協労連と建交労が配置され福祉保育労は九州ブロックに「組織拡大基金」をつかった「全国オルグ」が配置されています。
大阪労連は全労連運動と並行して大阪独自のとりくみを昨年提起し、ホームヘルパーの組織化や労働相談センター強化を打ち出し基金づくりをはじめています。福祉保育労大阪地方本部には、大阪労連から年間323,000円の分担金要請がきていますが、大阪地方本部としてこの件についての具体化は始まっていません。この点では、大阪地方本部としていそいで具体化をはかる必要があります。
大阪府は公私格差是正制度を改悪し、来年4月より「新たな補助金制度」にするとしています。これを受けて施設でも制度の内容をみきわめて、05年度予算を立てざるを得ないのが状況です。相次ぐ規制緩和で、施設での裁量が大幅に認められています。施設の財政状況を的確に把握し、定昇、ベースアップ、一時金など労使交渉での決着がこれまで以上に重要となっています。05国民春闘では、国民の要求前進のため、産業別労働組合の枠を越え、労働者が一丸となったとりくみが必要となっています。また、厚生労働省への要請行動や大阪府、中核市や各自治体への要求運動が大切となっています。
<1> 職場への成績主義・職能給賃金体系、人事考課に反対します。賃金表改定にあたっては、福祉職俸給表を基準とし、1級から3級の「わたり」を保障する「とおし号俸」を要求していきます。全職場で地本統一要求書を提出していきます。
施設建て替え積立金は、原則として総額の1/4を限度とします。各種引当金は、その目的を明らかにさせ判断していきます。また、必要に応じて地本での賃金検討委員会を開催していきます。
<2> 同一の職種で時間の短いパート職員の「均等待遇の原則」を賃金闘争の基本とするとともに、一時金、退職共済加入、社会保険加入などの条件を整えるよう要求していきます。
大阪労連に結集し、底なしの低賃金に歯止めをかける「全国一律最低賃金制」確立運動に積極的にとりくみます。
<3> 公務共闘とともに、近畿人事院事務局、大阪府人事委員会、大阪市人事委員会への申し入れを行なっていきます。
<4> 「新しい補助金制度」に対しては社会福祉法人立の福祉職場を対象に、長く働きつづけられる賃金が保障できるような制度にするよう大阪府に働きかけていきます。大阪市、堺市、高槻市、東大阪市にたいしても同様の制度をつくるよう強く求めていきます。
<5> 同友会にたいし、時給1,000円、月額176,000円(公私間短大卒初任給格付176,220円)を業界の最低基準の目安にするよう申し入れ社会世論化していきます。また、業界との懇談を行なっていきます。
恒常化しているサービス残業は、組合の諸活動の障害となっている場合も少なくありません。また、長時間過密労働は心の余裕を奪うばかりか、けい腕、腰痛の温床となっています。労働基準法や通達、その他の基準の遵守を求めるとりくみはこれからも重要です。
<1> 残業根絶にむけて、厚生労働省労働基準局が出したタイムカードの設置、使用者の労働時間掌握などを示した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」の履行を強く求めていきます。バザーや募金活動などの自主活動は、職員の自主性を尊重して、ノルマを課したり強要しないことを経営に求めていきます。
<2> 常勤換算方式の導入による正規職員の非正規職員への置き換えに反対します。パート・非常勤職員など不安定雇用労働者への正当な理由のない「雇止め」に反対します。
<3> 困難ケースの対応や制度変更にともなう実務の煩雑さ等、これまで以上に職員への負担が大きくなっていることを明らかにし、厚労省や自治体にたいし職員増員を求めていきます。また、年次有給休暇の完全取得のための人員増を要求します。
不当解雇や、組合攻撃に対しては毅然としてたたかいます。基本的組合諸活動の保障を経営に認めさせていくとともに、組合員の団結でかちとった権利を実施していきます。また、職場の困難性を反映し精神面で健康を害する人が増えています。メンタルヘルス対策の強化をはかります。
<1> 法人・施設はメンタルヘルス対策を研修と位置づけ、「大阪健康安全センター」の講師を招いて学習するなど、その予防につとめることを要求します。
<2> 職場に「労働安全委員会」(労働安全委員)を設置させ、「労働安全センター」が開く講座への経営経費による安全員の派遣を実施します。地本の健康対策委員会の強化をはかります。また、最低1回の「職業病」特別検診を含む健康診断の実施を求めていきます。
<3> 職場での労使関係のいっそうの正常化にむけて、分会の力量強化にむけた学習と対策を強化していきます。昼休みでの電話の取次ぎ、掲示板の設置、機関会議への勤務内組合活動の出席など基本的組合活動の保障を経営に求めていきます。
中央本部が提起する05年秋の「福祉を守る全国福祉関係者1万人フェスタ」(仮称)を成功させるための準備をすすめていきます。そのためにも04年11月に行なわれる「福祉を守る共同集会」を成功させていきます。
05年4月の介護保険制度の全般的「見なおし」、支援費制度の介護保険との統合、保育制度の改悪、社会福祉法人の改悪など、社会福祉制度「改革」の総仕上げに断固反対し、諸団体との共同の運動をつくります。
また、最低年金保障制度の確立、消費税増税に反対し、国民諸階層との共同を強めていきます。
<1> 「福祉を守る全国福祉関係者1万人フェスタ」を成功させるために、同友会をはじめとした関係諸団体に呼びかけ、「共同実行委員会」を組織し、準備をすすめていきます。その一環として04年11月に行なわれる「千人規模の共同集会」を位置づけてとりくみます。また「福祉を守る国民署名」を10万目標でとりくみます。
<2> 「三位一体改革」による自治体への補助金削減、一般財源化に反対していきます。また、「指定管理者制度」を利用した「公の施設」の民間営利企業委託に反対していきます。社会福祉サービスにおける自治体の実施責任を明らかにし、追求していきます。たとえ、公立施設が民間営利企業に委託させたとしても、公契約としての規制を自治体に要求していきます。
<3> 保育制度・支援費制度・介護保険制度への改善要求を確立し、関係諸団体との間で制度政策をつくり、政府・厚生労働省、自治体に要求していきます。また、運動での共同をつくりあげていきます。
<4> コロニー対策委員会、市社協対策委員会を強化するとともに、「府立施設の存続・発展をすすめる会」、「大阪市の公的ホームヘルパー事業の拡充を求める会」の運動を引き続き強化します。
<5> 改悪年金法の実施の中止・再審議を求める運動にとりくむとともに、全額国庫負担でまかなう「月7万円の最低保障年金制度」の実現をめざす運動をすすめます。また、年金財源のための消費税増税に反対していきます。
憲法改悪に反対し、運動と組織方針を持った組織として発展した大阪憲法会議と共同し、国民過半数署名をとりくみます。
また、自衛隊のイラク撤退を求めてたたかうとともに、核兵器の廃絶を求めていきます。
<1> 大阪憲法会議に加盟し、憲法改悪反対での国民過半数署名をとりくみます。また、分会・班では地域の「憲法を守る会」結成に参加していきます。
<2> 自衛隊のイラクからの即時撤退、日米安保条約の廃棄、核兵器の廃絶を求めていきます。
<3> 「愛国心」教育の強化など日本を戦争する国にするための人づくりをねらう教育基本法改悪法案に反対します。
昨年の大会以降、ポッポ保育園分会、あすわーく分会、吹田どんぐり保育園分会の3分会、きのみむすび保育園班、つくし保育園班の2班の3職場で組合を結成・加入促進をおこないました。地域の運動からつくられた吹田どんぐり保育園の場合、隣接する同種の分会からの粘り強い働きかけが分会結成につながったことは教訓的です。拡大の一方であらたに3職場で組合が消滅しました。消滅した原因をみると、<1>主要な組合員が職場をやめ会議が開かれることなく連絡が途絶えた。<2>地本、支部の結集が弱まり、分会書記長の退職とかさなり分会大会を開いて組合を解散した。<3>大阪労連傘下の別組織に加盟し、福祉保育労を脱退した等があげられます。
組合の組織拡大は、要求実現からいっても追及されなければならない重要な課題ですが、分会の組織強化は、これからの福祉保育労を担う組合員の育成という点ではたいへん重要な課題となっています。しかし、仕事の忙しさ、非常勤・パートの増大での困難さ、中堅職員の退職などで組合の組織そのものがたいへん弱体化している職場も少なくありません。組織拡大と合わせて、組織強化が重要な課題となっています。
どの産別組合でも組織数を減らし、大阪労連でも発足当時から1万人が減少しました。その中で唯一増えている福祉保育労の期待は大きなものとなっています。とりわけ、労働者の要求実現をめざす地域の共同闘争、自治体を地域住民の守り手につくり変える地域労連は、組織的にも、財政的にもたいへんな状況となっており、体制強化が求められています。
<1> 組織強化と福祉保育労を担う幹部を育成するため、関西勤労協と連携し、系統的、計画的な学習会を計画します。そのための実行委員会を立ち上げます。
<2> 支部と分会は大阪労連地区協や地域労連に積極的に参加し、諸行動に参加して大阪の労働運動の活性化の一翼を担っていきます。
<3> 3,000人大阪地方本部づくりを早期に達成します。少数分会は、過半数をめざし、多数分会はパート・非常勤職員も含め、100%の組織化をめざします。パート・非常勤の要求を掲げ、その実現をめざします。
<4> 地域の福祉要求に応え、地域の住民の協力で開所した保育所・障害者通所作業所の組織化を重点課題にしていきます。
<5> 分会は分会役員体制を確立し、少なくても月1回以上の定例分(班)会会議の定着化、分会ニュースの発行をめざします。
<6> 支部が日常的に機能するように支部代表者会議をいっそう充実させます。また、支部は地方本部執行委員会と連動させて、月1回の分会長会議をひらき分(班)会の結集を意識的に追及していきます。
<7> 地本機関紙部体制を強化し「ともしび」紙面のいっそうの充実をはかるとともに、「福祉のひろば」の読者拡大と、「福祉のひろば」を活用した職場での学習会を組織していきます。
<8> 青年と女性の多い福祉保育労の特性を生かし、青年部と女性部の強化につとめます。
<9> 種別協議会の活動強化をめざします。保育・障害種別では、支部を単位に保育・障害の種別の交流会をめざします。種別関係者を軸にして、大阪社会福祉研究会準備をすすめます。
<10> 組合費の当月納入を追及し、地本財政の確立をめざし、支部還元金交付の遅延をなくして支部の活性化をはかっていきます。争議を励ますためにも、年末助け合いを組合員一人あたり300円の目標でとりくみ、年内に集めきります。
第2号議案 ― 組織拡大推進基金について
大阪地方本部の組織拡大は、主に既存の社会福祉法人の事業拡大などによる拡大と、非常勤・パートの拡大で毎年、増勢をしています。
しかし、大阪労連では年々減少し、労連設立には10万人を超えていた組織数が、2002年には9万人4千人を割り込み、減少に歯止めがかからないのが現状です。
その原因は、長期不況のもとで、ここ数年間で倒産・廃業や自治体リストラ、正規労働者の定年・退職に変わってのパート・非正規労働者の組織化が遅れていることにあります。
大阪労連では新しい運動と組織のあり方を求めて、「パート・非常勤部会」の発足、「地域労組おおさか」などの未組織労働者の受け皿づくり、「大阪労働相談センター」の開設などの体制を整えつつありますが、今後その強化が必要です。
大阪労連は、組織拡大推進基金・カンパの目標を年間1200万円とし、3年間としています。大阪地方本部の割り当ては年間323.000円となります。
基金の使途は、<1>「非正規・不安定雇用労働者」を含む個人加盟労組の立ち上げに対する補助を行ないます。<2>地域の常設労働センターの設置と専任相談員やオルグの配置をすすめます。<3>大阪でのホームヘルパー連絡会の結成をすすめ、その事業をすすめる専任者を配置していきます。また、パート・臨時・派遣労働者の結集と組織化を本格的に進めるため大阪労連にその専任者を配置することも検討されています。
<1> 組合員の討議を行ない今年9月から、臨時組合費20円を2004年度から2006年度の3年間にかぎり徴収していきます。なお、減額組合費組合員は対象外とします。
<2> 臨時組合費の納入は、議案が可決された場合は2004年7月に遡っておこないます。また、組合員からの直接納入とするか、分会還元金で負担するかはそれぞれの分会できめることとします。 |