■運動方針・2002年度議案書■ 戻る

■■■ 2002年度議案書 ■■■

はじめに

(1) 政府・大企業と国民との矛盾激化のもとで「国民総行動」型の労働組合運動をおおきくしましょう

<1>昨年10月の児童福祉法「改悪」による公立保育所の民間払下げと企業参入の促進、2003年度からの障害者福祉での支援費による直接契約制度の発足など、政府と財界の「福祉市場化」路線は容赦なくすすめられています。この路線が日本国憲法に保障する国民の生存権から大きくかけはなれ、福祉の拡充を求める国民の切実なねがいや期待を裏切ったものであることは、事態が進行するとともに誰の目にも明らかになることでしょう。福祉保育労大阪地方本部は、「福祉市場化」路線が国民の切実なねがいと大きく矛盾することを、自然成長的に明らかになることを待つのではなく運動の力で積極的に明らかにしていきます。

<2>それにしても、日本医師会も反対し全労連・連合などの労働組合運動や社保協のとりくみで集めた全国2,600万筆以上の署名を無視した与党3党は、医療関連法「改悪」を与党3党だけで強行採決し成立させました。異常なまでの高支持率で発足した小泉内閣は1年もたたずにその支持率は低下し、「国会を解散し国民の信を問え」の世論におびえながら次々に悪法を国会に提出してきました。そして会期の大幅延長で、やっと成立した「改悪」医療関連法です。
 今日、大企業ははたらく労働者や国民生活を犠牲にしてでも海外に生産拠点を移し、国内では大リストラと産業空洞化のグローバル経済(アメリカ中心の経済)につきすすみ、小泉内閣は「構造改革」をかかげてそれを後押ししています。大企業と政府は、終身雇用と年功序列賃金体系をなくし、国民のいのちと生活を切りすてる社会保障制度の大改悪、そして、公務員制度大改悪と市町村合併で大企業に奉仕する自治体行政の変質など、国民は「やらずボッタクリ」の状況に落としこめられています。このような大企業と小泉内閣の「構造改革」にたいし、国民の中にはこれまでの異常なまでの大企業奉仕の政治にたいし、ふうふつとした怒りと反対の声が全国・全分野で広がっています。

<3>このような国民世論を背景にして、はたらく労働者と国民の怒りと反対の声を総結集する『国民総行動』型の労働組合運動もはじまりました。
福祉保育労大阪地方本部は『国民総行動』型の労働組合運動に積極的に参加し、福祉拡充と福祉労働者の労働条件の抜本改善要求をかかげ、組合員みんなで職場と地域から『国民総行動』型の運動参加と活動強化をすすめていきます。

(2)早期に3,000人台の福祉保育労大阪地方本部を組合員みんなでつくり上げましょう

<1>国民の切実な福祉要求とそれを逆手にとった政府と財界の「福祉市場化」路線のもとで、民間福祉職場とそこにはたらく福祉労働者は急増しています。厚労省の調査では2000年度現在、社会福祉施設にはたらく職員だけでも全国で約108万人(大阪府下で約4万人)に急増しています。仮に対前年比並の増加率とするなら、2002年度現在では全国で約140万人(大阪府下で約5万2千人)が推計され、在宅介護や福祉団体職場を加えれば160万人(大阪府下で6万人)をこえる福祉労働者がいることになります。
急増する福祉労働者、とりわけ民間福祉労働者の実態をみたとき、その特徴はパート・非常勤職員など不安定雇用職員が急増し福祉職員のなかにしめる比率が年々高まっていることです。このような福祉職場での不安定雇用職員の急増は、他産業でのパート・非常勤など不安定雇用労働者の急増と一致しています。そして、不安定雇用労働者の急増は子育てを終えた中高年女性労働者だけでなく、広範な青年労働者をまきこんで進行しています。

<2>民間福祉職場の圧倒多数が女性職員・青年職員であることをみたとき、福祉保育労大阪地方本部は不安定雇用労働者問題を民間福祉職場の固有問題にするのではなく、全労働者の課題として位置づけ「賃金の底上げ」要求と均等待遇の実現・全国最低賃金制度の確立、「雇用を守れ」運動に結びつけ、全労働者的な課題に積極的に参加・組織をしていく必要があります。
そして、福祉保育労大阪地方本部を正規・非正規や業種や経営形態のちがいをこえて、3,000人をこえる組織を早期につくり上げる必要があります。組織の拡大強化の課題を最重点課題のひとつに位置づけ、支部・分(班)会、組合員みんなの力で福祉保育労大阪地方本部の社会的“力”(影響力)を強めようではありませんか。


第1章 社会福祉をとりまく情勢

(一)国民に痛みだけを押しつける日本の政治と大企業
 (1) ながびく不況で大阪経済は“どん底”の状態、府民生活の悪化と深刻な福祉問題を生む
<1>2002年春闘は、ながびく不況と大企業の「純粋持株会社」化や国際的な産業再編を背景にした大リストラの下で、これまでにないきびしい春闘となりました。大企業のリストラ競争は主要企業の30社の人員削減をみただけでも、この2年間にNTTの11万人、日立製作所の1万4700人をはじめ20万人に達しています。これらの大企業の大リストラ攻撃で見逃せないのは、小泉構造改革の「金融再生法」や「早期健全化法」をつかってすすめられていることです。たとえば、「産業再生法」では労働者1人減らせば100万円の税金をまけるというように、「労働者を解雇せよ」と言わんばかりのものとなっています。
 また、不況を口実にした賃金カットや能力・「成果主義」賃金による総人件費抑制、早期退職勧奨と50歳以上からは賃下げなどというような中高齢労働者への攻撃など、勤労世帯の実収入は1997年以来4年連続して減少しています。

<2>中小企業経営も悪化の一途をたどっています。大企業のアジアへの生産拠点の移転や低価格化、下請け単価の一方的な切り下げと仕事の打ち切り、金融機関の“貸し渋り”・“貸し剥がし”などにより、企業倒産は2001年度には2万件を突破しています。そして、長期につづく深刻な不況、信用金庫や信用組合などの地域金融機関の淘汰再編、大型店舗の進出による地域商店街の衰退などによって、地域経済の空洞化はいっそうすすんでいます。とりわけ、中小企業の多い大阪経済は、北海道や沖縄県とならんで全国的にも最悪の状態となっています。  

<3>以上のような経済状況を反映して大阪府は5月末時点で、法人2税は1,465億円(前年度比82.6%)にまで落ちこんでいます。大阪府の当初の見込みでは、92.5%で持ちこたえるはずでしたが9.9%も下回っています。とくに、製造業では68.9%と大きく落ちこんでいます。 
 5月の総務庁調査による失業率は、全国平均で5.4%、失業者数375万人と発表されました。これまでの調査方法をかえ、失業率が下がったかのように見せかけていますが実数は増えつづけています。大阪府下の失業率は、平成14年1月から3月の月間平均7.2%、32万2千人(前年度比19,000人増)となっており、なかでも男性で35歳〜64歳の中高年齢の失業率、失業者がふえつづけています。

<4>長期化する経済不況のもとで、福祉問題は量的にも質的にもいっそう深刻化し困難化しています。
この数年、3万人を超える自殺者は、交通事故死亡者をはるかに上まわります。リストラや中小企業倒産の影響とも重なり、深刻な家庭崩壊や「困難家庭」を生んでいます。子どもをめぐる問題の象徴としての児童虐待は、全国児童養護施設協議会(全養協)の調べでは児童養護施設に入所した5,425人の子どもの53%(2,895人)が虐待を受けていると報告しています。大阪府下の児童養護施設でも入所児の3割以上、なかには入所児の半数近くが虐待を受けた児童でしめられる施設も現れています。このような施設では、子ども同士のふれあいが希薄となり子ども集団が成りたたず、深刻な職員不足とあいまって過密労働を生んでいます。
企業のリストラ「合理化」は若い共働き家庭、とりわけ女性労働者に過重な負担を強いています。このような状況を反映して、長時間保育や産休明け保育・緊急一時保育をもとめる父母の声は後をたちません。「少子化の危機」が叫ばれているにもかかわらず待機児童は減らないばかりか、2001年4月現在、大阪府下では大阪市1,364人・東大阪市1,076人と全国第1位と2位の保育待機児童を生んでいます。
この他、1万人をこえるホームレスや、高齢者の生活保護世帯の急増と特養ホーム入所希望者の倍増、障害児者をかかえる家庭の生計困難など、不況が長びき深刻化すればするほど府民の社会福祉要求も切実化しています。

(2) 財政危機を口実に社会保障制度を大改悪し、国民に負担と犠牲を強いる小泉「構造改革」
<1>2002年 7月26日、自民、公明、保守の与党3党は国民の2,600万筆をこえる反対署名を無視して、医療改悪法案を強行採決し成立させました。この悪法成立により、国民負担増は年間1兆5千億円にもなり不況にあえぐ国民生活をいっそう直撃することとなりかねません。国民生活への重い負担は消費不況に拍車をかけ、ますます不況を深刻化・長期化させるものでしかありません。
また、保険料を引上げ個人負担3割の改悪はおおよ
そ社会保険とよべる制度ではなく、日本の社会保障制度の根幹をゆるがすものとなっています。年金保険制度のさらなる改悪や雇用保険の掛け金の引上げと給付の引き下げなど、すべての保険制度改悪に連動する元となっています。
 応益負担を原則とする社会保険制度を曲がりなりにも社会保障制度の一つとして維持していくためには、(a)失業と倒産の連鎖を防ぎ保険加入者の減少をくいとめる、(b)92年度の16.4%から2000年に13%に削減した政府管掌保険への国庫負担率を復活する、(c)高すぎる薬価を欧米並みに引き下げる、(d)病気の予防・早期発見・早期治療で医療費の膨張をおさえる等です。以上の点を正せば、医療保険は充分に持続可能であり、今後ともこれらの点を国民に明らかにしていく運動が重要となっています。

<2>政府税制調査会と経済財政審議会はあいついで税制改革の基本方針をまとめ、今後の税制のあり方に 関しいっそうの国民負担増の方向を打出しています。そこでは、「広く浅く」「広く公平に」を合言葉に所得税の課税最低限度額の引き下げ、消費税の引き上げ、赤字の企業からも税金をとる外形標準課税の導入など、まさに国民への増税対策そのものです。それとは裏腹に、すでに来年度にむけて法人税の1兆円減税案が登場しはじめています。
 小泉流「構造改革」は、日本経済の将来を描ききれないどころか、日本の経済危機をいっそう深刻化させています。

(3)有事(戦争)法制や個人情報保護法など平和と民主主義の危機と、それを阻止した国民世論と運動の力
<1>アメリカ軍が起こす戦争に自衛隊を参戦させ、国民に戦争協力を強要する有事法制は、幅ひろい国民の運動で通常国会での成立を阻止させました。しかし、小泉首相と与党3党は「次期の臨時国会で民主党など野党の一部の同調を得られる内容にしたい」と、引きつづき成立に強い意欲を持っており今後も予断は許されません。また、有事法制の国会審議のなかで防衛庁が個人情報リストを組織的に集めていた問題や、官房長官の非核三原則の見直し発言が明らかになるなど、日本の将来と平和・民主主義にたいし危険な策動が明らかになっています。神戸大学や大阪大学のゼミ学生を利用して、自衛隊員も参加した「台湾海峡有事」の際の国家戦略・軍事戦略の研究がおこなわれていますが、これも文部科学省と防衛庁がからんでいることは間違いありません。

<2>個人情報保護法案等のメディア規制3法案は、個人情報保護、人権擁護と耳ざわりよく聞こえますが、その本質は言論・報道の自由に制約を加えることをねらいにしたものです。また、「有事体制」を想定して、政府が言論・表現の自由を管理統制することと連動しています。
このような危険性が明らかになるにつれて新聞、放送、出版業界や作家など、報道・言論にかかわる人たちが先頭にたった国民の反対運動は急速にひろまり、法案を廃案においこんでいます。

(二)、小泉「構造改革」のいっそうの推進で、社会保障制度の大改悪・「福祉市場化」路線がすすめられる
(1)3兆円を超える国民負担と規制改革推進3ヵ年計画の重点課題

 <1>医療大改悪で国民負担増の1兆5千億円につづき、10月からは雇用保険料の掛け金が1.2%から1.4%へ引き上げられ、2003年度の年金制度の再改悪と介護保険料の値上げ等で国民負担は3兆円を超えるといいます。
 政府は2002年3月29日、「規制改革推進3ヵ年計画」改定の閣議決定を行いました。そこに画かれている福祉・保育は、(a)施設介護における多様な経営主体の対等な競争、(b)保育サービスの拡充と質的向上、(c)社会福祉法人のあり方の見直し等を柱に、これまで以上に基準や規制緩和の推進をうちだしています。また、特養ホームの入居者へのホテルコスト導入による利用者負担の強化、公立保育所の民営化の徹底、社会福祉法人の剰余金使途制限の緩和など、「福祉市場化」による公的福祉制度の切りすて方向がいっそう明らかにされています。

 <2>総合規制改革会議は2002年7月23日に「中間とりまとめ ― 経済活性化のための重点的に推進すべき規制改革」を発表しました。そして、できるものは秋の臨時国会からでも法制化し、年末には最終報告となる「第2次答申」を予定しています。
「中間とりまとめ」では、労働者派遣事業や有期限雇用労働のいっそうの拡大と裁量労働制の拡大を軸とした労働基準法の「抜本的改正」、企業年金制度や退職金の見直しなど労働行政全般の改悪方向が打出されています。また、社会福祉分野でもケアハウス事業への企業参入のいっそうの規制緩和と特養ホームへの企業参入の検討、社会福祉法人の財務諸表のインターネットでの公開等が報告されています。
保育事業の利用者と事業者による「直接契約方式」についても検討対象となり、今のところ厚労省は反対していますが今後の進捗状況によっては予断を許しません。今後、最終報告にむけて、引きつづき世論の関心を強めていく必要があります。

(2)社会福祉事業の各分野では、「福祉市場化」がいっそうすすむ
<1>障害者児の福祉分野では ― 2003年度4月より措置制度にかわり、障害児入所施設をのぞいた福祉施設と居宅支援事業に支援費制度が導入されます。厚生労働省は2002年6月13日、在宅・施設サービスを提供する指定業者などに対して、人員配置・設備などの基準を定めた省令を公示しました。
 その内容は、居宅介護の職員基準では1事業所あたり専任・常勤の管理者配置と従業員数を常勤換算で2.5人以上とする、知的障害者入所更生施設の基準では保健師・看護師・生活支援員・作業指導員の総数を入所者にたいし常勤換算で4.3人以上、栄養士1人以上とすること、また、設備基準では居室定員を4人以下で入所者一人あたりの床面積を6.6平方メートル以上とするなどとしています。職員の配置基準はでの大きな問題は、非常勤・パート職員の労働時間総数を8時間で除してカウントする常勤換算方法を導入し、最低基準を曖昧にしていることです。
 また、「施設不足からサービス供給ができないことを理由に市町村が支援費支給をしない」 「重度知的障害者の契約や契約期間はどうなるのか」 「措置費に比べ施設収入が不安定となり利用者や職員にしわよせがでてくるのではないか」 「自治体の責任が後退する」等々、実施をまえに関係者の間に不安がひろがっています。
 今後、10月からは支援費の申請受付がはじまります。また、2003年度国家予算の概算要求のでる8月には「支援費」基準額、12月以降には利用者負担額を厚生労働省令として各々出す予定になっています。
<2>高齢者福祉の分野では ― 昨年10月から開かれている社会保障審議会・介護給付費分科会での介護報酬のみなおしは、5月から厚生労働省案をもとに審議がおこなわれ来年1月に新単価にかんする答申が予定されています。
 厚生労働省は、(a)訪問介護の報酬体系をこれまでの身体・家事・複合の3類型から「身体介護」「生活支援(仮称)」の2類型とする、(b)「生活支援」の単価を「家事援助」より高くし「身体介護」の単価を引き下げる、(c)「介護タクシー」の報酬体系を別途設ける、(d)3級ヘルパーの報酬単価を提供施設共通にする、(e)居宅介護支援の報酬を一本化する、(f)通所リハビリテーションの報酬単価を提供施設共通にする、(g)グループホームの夜勤体制に加算するなどを提案しています。さらに、黒字になっている施設の介護報酬を引き下げ、在宅介護事業の報酬単価引上げの財源にしていくことも出されています。厚生労働省のこのような検討案にたいし、これまで介護保険の35.9%をしめてきた「家事援助」利用者の利用料が、「生活支援」の報酬単価引き上げで利用者負担が利用しにくくならないか、「身体介護」や「施設介護」の報酬単価引き下げでサービスの質が低下しないかなど、関係者のなかに新たな不安がひろがっています。
 2002年4月の厚労省の「介護事業経営概況調査」は、特養ホームの収益率は13.8%(81〜100人規模では20%)、訪問介護事業ではマイナス3.7%という結果を報告しています。収益率の高い81〜100人規模の特養ホームの人件費比率は51.5%であり、給食業務・事務部門の外部委託、職員の非常勤化や賃金引き下げなどを十分に予測させるものです。その点で、今後予測される施設介護の介護報酬の引き下げは、特養ホームの総人件費抑制の方向にいっそうの拍車がかかるであろうことをシッカリと見ておく必要があります。

<3>保育所の分野では ― 政府の規制改革推進3ヵ年計画の改定をうけて、これまでの「入所児童定員25%増」の枠はなくなり無制限となりました。また、職員配置基準の2割までと制限されていた短時間勤務保育士も常勤換算方式を拡大し、「保育児の組やグループ編成を明確に」して各組や各グループに常勤の保育士1人以上の他は常勤・非常勤を問わないとしています。そして、分園方式については新設法人にも認め、これまでの1保育所につき2ヵ所の制限も無制限となっています。
 新会計基準の導入にあわせ「保育運営費の経理について」では、民間施設給与等改善費の弾力的運用について、(a)同一法人が設置する他の保育所の整備にかかわる経費、(b)送迎用駐車場の賃借料、(c)通所バス以外の行事用車両等の事項を追加し、いっそうの弾力化を認めています。保育運営費の特別加算である民間施設給与等改善費は職員の給与改善のために加算されてきたものであり、それが弾力化の名で人件費以外に流用の範囲を拡大するのはたいへん問題です。
 昨年10月に児童福祉法一部「改悪」され、(a)公立保育所の民営化の推進、(b)PFI法に準じて企業が建設する保育所にも施設整備費(建設費の3/4補助)の適用、(c)保育士の法制化と保育士の役割を保育と親への育児相談等を法律に明記しました。このような法「改悪」によって、全国各地で公立保育所つぶしや公立保育所の民間企業への委託化がすすみはじめています。
 
(3)「福祉市場化」と「地方行革」による福祉総切りすては、福祉職員の労働条件にも直撃
<1>昨年に実施した福祉保育労全国保育部会の労働条件アンケートでは、職員総数にしめる非常勤職員の割合は38.4%と前回調査にくらべ17.5%もふえています。このような非常勤職員の急増は厚生労働省の「2000年度社会福祉施設調査」でも明らかで、全国約108万人の福祉施設職員のうち非常勤職員がしめる割合は年々ふえています。
パート・非常勤職員の急増は、福祉労働者全体の低賃金構造と一体のものとなっています。それが端的に現われているのが措置費や保育運営費で、非常勤職員の賃金は保育士で日額6,120円、時給765円とたいへん低い積算基準となっています。この低い積算基準と職員配置基準を常勤換算方式にすることで、大量のパート・非常勤職員をつくりだす構造をもっているといっても過言ではありません。

<2>大阪府は民間社会福祉施設従事職員給与改善費(「公私間格差是正」補助金)を2000年度から2005年度の間に根本から改悪する作業をすすめ、2002年度は暫定率75%(2000年度・99%、2001年度・95%)といっきに引き下げてきています。この措置は昨年10月の大阪府「新行財政計画」を反映したものであり、このような暫定率で今後推移していけば2005年度には補助金はゼロとなってしまいます。府の担当課は、「2005年度までに法人で“軟着陸”してほしい。それが暫定期間の意味だ」とし、2005年度からの補助金のあり方については検討委員会を設置することを明らかにしています。また、2003年度からの障害者分野での支援費方式の導入については、大阪府や大阪市は支援費方式の全体像が明らかになった段階で補助金への影響を考えていくとしています。
このような「公私間格差是正」補助金の削減は、すでに一部の民間福祉職場で定期昇給ストップや一時金の削減として影響がではじめています。また、大阪府の担当課みずからが驚くほど、昨年1年間に中高年職員の退職増を生んでいます。

<3>虐待児問題や親の子育て不安、保育所や障害者施設での緊急一時預かりの急増、特養ホームの待機者増など、府民の福祉要求は切実・多様化しており、あわせて「処遇困難」ケースも急増しています。ところがそれに対応すべき職員配置は増えるどころか、パート・非常勤など不安定雇用職員化によって労働密度はたかまり福祉職員の労働過重がひろがっています。
 こうしたきびしい労働実態のもとで福祉職員の健康破壊がすすみ、とりわけストレスによるメンタルな病気が急増しています。福祉保育労中央本部の2002年春闘アンケート結果は、701人の休業者中、腰痛症等での休業が269人(38.4%)であり、145人(20.7%)がメンタルな病気で休業している実態が明らかになっています。
 職員がいきいきと健康で働きつづけることは、利用者処遇の向上にとって最低条件です。そのためには職場の労働環境の改善とあわせ、健康ではたらき続けられる職員増員と労働時間の短縮がどうしても必要になっています。

)大阪府「新行財政計画」をはじめとした“自治体リストラ”と公務員攻撃は、「福祉市場化」路線の応援団
(1)大阪府は、「公私間格差是正」補助金の見直しを今後2年間かけて検討、大阪市と堺市は大阪府の方向を見守っている
<1>大阪府の「公私間格差是正」補助金の見直し計画は、(a)2002年度に「障害者施設など国の社会福祉基礎構造改革の内容や府職員の給与水準の動向をふまえ、社会福祉施設に対する支援のあり方について検討会を設置」、(b)2003年度に「社会福祉施設に対する支援のあり方について、(c)2003年度末までに検討結果のとりまとめ」、2004年度には「2005年度以降の補助金の方向性について周知徹底する」等としています。
 東京都は「公私間格差是正」制度のあり方について、『福祉サービス提供主体経営改革に関する提言委員会』から今年7月に「中間提言」を報告しています。そこでは「既存事業者(社会福祉法人)だけの補助は公平ではない」と制度「廃止」を打ちだしており、大阪府や大阪市、堺市の今後の見直しに大きな影響を与えようとしています。
 大阪市は2002年度は昨年並みに実施していますが2003年度以降の方向性について、これまでの「大阪市独自で検討」するとした姿勢から「2003年度の支援費制度の発足と大阪府の動向をみて検討する」と姿勢が揺らいできています。この点では、大阪市や堺市の関係でも大阪府への運動はいっそう重要になっています。

<2>大阪府「新行財政計画」の具体化の初年度として、2002年度大阪府予算が可決し執行されています。その内容は、福祉医療助成制度の改悪、府営住宅の家賃減免の削減、府立高校の再編・統合などの府民生活を犠牲にする一方で、関西空港2期工事などの巨大開発優先、同和行政の温存など旧態依然の大企業と関西財界のもとめる府政が継続しています。
また、きびしい財政状況を口実にして府立病院見直しや、府立大学の再編成、研究機関の大リストラを予定しています。そして、さらに重大なことは大阪府政が本来になっている直接の府民サービスの切りすてや、市町村行政を調整する役割を全面的に投げ捨てようとしていることです。
国のすすめる市町村の大合併についても、「合併によって行政機構が大きくなれば専門職員も配置でき、住民サービスが向上し広域的な課題に対応でき財政効率化が高まる」と、政府といっしょになって大阪府は旗振り役をになっています。市町村合併にたいして、市町村からは「これ以上地方交付金を削減されたらたいへん」「合併すれば財政危機でも借入が特別枠で認められ(合併特例債)建設事業ができる」などと、住民置き去りの合併をすすめている自治体を生んでいます。
 大阪府は政府の方針にしたがい「市町村合併推進要綱」をつくり積極的に合併推進をすすめていますが、そのねらいは政府の下請け機関として合併を推進するだけでなく、大阪府「新行財政計画」にみられるように府民生活の施策を削減する一方で、削減した分を市町村合併で肩代わりさせる受け皿づくりにあります。
 大阪府はどの経済指数をとってみても、全国最悪で「どん底」状態にあります。関空2期工事に象徴されるムダな大型開発の公共事業推進から「くらし・福祉・医療・教育・中小企業支援」の府政に切りかえ、大阪経済の立て直しを求める新しい府民運動と世論づくりが重要になっています。

<3>大阪市はオリンピック誘致の失敗と「国際集客都市」の破綻を反省するどころか、「都市再生」の名で夢州(ゆめしま)整備関係に165億円・新人工島205億円など、新たな巨大開発の公共事業推進をすすめています。また、経営破綻をした第3セクター事業の赤字穴埋めに125億円・一般施策の中で同和行政を温存するために23億円を予算化しています。その一方で国保料の3%値上げをはじめ、学校週休2日制の実施で必要性が高まっている学童保育への補助金はわずか年間2万円増だけなど、あいかわらずの大企業奉仕の市政をつづけ市民の願いとはほど遠いものとなっています。
大阪市の借金はムダな巨大開発公共事業とその失敗で借金は年々ふえつづけ、過去最高の5兆4311億円にまでふくれあがり市民一人あたり209万円にものぼっています。このような大阪市を変えるために来年秋の大阪市長選挙は重要であり、いまからその準備活動に大阪地方本部としても支部と一緒になって積極的に参加していく必要があります。

(2)つよまる公務員攻撃は“大企業に奉仕する公務員づくり”をめざし、民間福祉労働者にも大きな影響をあたえる
<1>公務員の賃金は民間賃金実態を反映して、人事院発足以来はじめて月額本俸そのものの「マイナス勧告」となりました。すでに、財務担当大臣や経済担当大臣など政府関係者は人事院勧告が出る前から「マイナス勧告」を声高にさけび、人事院もこれまでの賃金調査方法をかえて50人未満の職域にまで拡大し、民間の賃金水準の低さを強調しようと着々と準備をしています。
昨年12月25日、「公務員制度改革大綱」が閣議決定されましたが、政府は2002年度中に国家公務員法・地方公務員法の改悪案を国会に提出できるよう準備をすすめています。そこでは高級官僚の「天下り」合法化や「能力・業績主義」人事管理による「新給与体系」と雇用保障をなくす「新人事管理体制」の導入、引きつづきの労動基本権抑圧(ストライキ禁止)などが盛られています。公務員制度の大改悪の目的は、国民のいのちやくらしを守る公務員ではなく大企業の利益を忠実に執行する公務員づくりにあります。
公務員制度の大改悪が福祉制度と民間福祉労働者にもおおきな影響を与えずにはおかないことを、しっかりと見ておく必要があります。

<2>公務員制度の大改悪は、地方自治体レベルではすでに実質的にはじまっています。東京都や大阪府では試行期間ですが、すでに人事考課(勤務評定)がはじまっています。大阪府の場合、試行期間の間は賃金に反映しないとしていますが5号の巾で特別昇給を実施している現在、実質的にはじまっています。また、3,000人の府職員削減や直営事業の民間払下げによる職場の縮小、パソコン導入による事務の簡素化と人事管理、60歳停年を繰り上げた早期退職勧奨、組合活動の極端な制限など、府職員へのすさまじい攻撃がはじまっています。市町村での公立保育所の民間への払下げと、保育士の他職域への配置がえや払下げ職場への出向も公務員攻撃の一環です。
こうした公務員減らしをすすめるために、民間福祉職場は「天下り」先の対象として位置づけられ、民間福祉労働者の職を侵食したり「天下り」を通して“官が民を統制する”構造がつくりだされようとしています。とりわけ、このような傾向は大阪市につよく現われ、大阪市社協をはじめ外郭団体や社会福祉法人にまで広がりはじめていることに十分な注意が必要です。

21世紀の労働組合運動の在り方が問われる今日の時代、ナショナルセンターの枠をこえた労働運動とあらたな国民共同が芽生えはじめる。
<1>政府と大企業のきびしいリストラや総人件費抑制の攻撃にたいし、はたらく労働者の要求の一致はナショナルセンターの枠をこえてひろがっています。それはパート労働者の賃金の底上げ要求や雇用の拡大など、「はたらくルールの確立」「真の全国一律最低賃金制度の確立」など、要求をもとにして国会前での共同座り込み行動にまで発展しています。
このようなナショナルセンターの枠をこえた要求の一致と共同は、国民諸階層との共同にも大きく発展してきています。健康保険制度の改悪では全労連・連合と医療団体や社保協の運動をとおして、全国2,600万筆をこえる反対署名をあつめ連日のように国会行動がとりくまれました。また、有事法制阻止の運動では大阪で陸・海・空の労働組合がナショナルセンターの枠をこえて大集会を開催し、中央では国民諸階層を代表する人たちの呼びかけで大集会が数回にわたってもたれています。

<2>春闘期間中にとりくまれた“4・12国民総行動”で大阪労連傘下の組合は地域総行動をおこない、地域医療にとりくむ保険医(個人病院)との共同や地域経済の不況克服を求める中小零細業者との共同がひろがっています。福祉保育労大阪地方本部では、1,000人をこえる組合員が職場集会や地域の宣伝行動に積極的に参加しました。
このような“国民総行動”のとりくみはこれまでの労働組合運動にはなかった運動であり、地域を軸にして様々な要求を労働組合と関係諸団体が共同して運動をおこす新しい芽生えとなっています。福祉保育労大阪地方本部はこの新しい芽生えをたいせつにし、福祉拡充と福祉労働者の労働条件改善の要求をかかげ、積極的に運動に参加して職場と地域から国民に痛みだけをおしつける小泉「構造改革」反対、地域経済を守れの声を大きくひろげていく必要があります。

第2章  運動の基本方向(基調)

(1)政府や財界のすすめる「福祉市場化」路線のもとで、利用者(住民)の福祉向上のためにも労働条件改悪に反対し、福祉労働者の労働条件向上にむけた運動をとりくみます。また、障害者福祉支援費制度の導入や、公私間格差是正制度をはじめとした自治体補助金の改悪の影響による職場の労働条件問題は、現行水準の引き下げを許さないことを原則にし労使間交渉では柔軟に対応していきます。
<1>住民の福祉を国と自治体の責任でおこなってきた措置制度は、2000年度からの介護保険を契機におおきく崩されてきています。措置制度にかわって新しく登場した住民と福祉サービス事業者による契約制度は、社会福祉事業の国と自治体の責任を放棄するとともに、さまざまな福祉事業の分野に企業参入をつぎつぎに認めてきています。また、非営利法人である社会福祉法人に「新会計基準」をつかって民間営利企業の経営手法を導入させ、営利企業と社会福祉法人、社会福祉法人やNPO(非営利組織)等の「非営利法人」間の競争をあおっています。
 社会福祉事業は自治体行政のおおきな柱の一つです。ところが、大阪府をはじめ府下の自治体は福祉制度の大改悪と財政危機を口実に、これまで自治体独自の補助金の削減や切りすてをすすめてきています。
 福祉保育労大阪地方本部は、福祉の営利化や「福祉市場化」路線に反対し、国や自治体の福祉の公的責任を求める運動を強化していきます。とりわけ、大阪府をはじめとした自治体への運動を、経営や住民と共同して積極的にとりくみます。

<2>「福祉市場化」路線のすすむ下で社会福祉法人では、“生き残り”をかけた「合理化」や非常勤・パートなど不安定雇用職員の急増や賃金水準の引き下げなどにより職員の労働条件悪化がすすんでいます。福祉サービスは福祉労働そのものであり、福祉職員の労働条件悪化は福祉サービスの質の低下に直結します。
 福祉保育労大阪地方本部は、福祉サービスの低下につながるような労働条件の引き下げや改悪に反対します。そのために、労働条件改悪の根源となっている国や自治体の福祉施策の後退にたいし、住民の福祉サービス向上と福祉職員の労働条件改善・民間福祉経営の発展等、一致できる課題での「経営や利用者・住民との共同」を積極的にひろげていきます。
また、現実問題として制度改悪と自治体補助金の削減によって経営に支障をきたした場合は、はたらく職員の雇用をまもることと現行の労働条件水準を維持することを原則に、個別の経営体の条件にあった柔軟な対応をおこなっていきます。

(2)政府や財界の「福祉市場化」攻撃にたいし、住民負担の軽減、自治体の役割の明確化、人件費財源の公的保障等の運動を強化していきます。とりわけ福祉労働のコスト(人件費)については、社会世論づくりを労使共同・住民共同ですすめ社会世論の力で向上をめざします。
<1>政府・財界の「福祉市場化」路線は、福祉サービスをうける住民と福祉職場にはたらく職員におおきな犠牲を強いています。また、住民の立場にたって行政をすすめようとする自治体や、まじめな社会福祉法人の経営にもおおきな影響を与えています。
 また、政府と財界は「福祉市場化」路線をすすめるにあたり、国家財政の危機と社会保障制度大改悪、消費税の大幅引上げを三位一体にして宣伝しています。
 福祉保育労大阪地方本部は、このような社会保障制度大改悪による国民生活犠牲や消費税の大幅引上げ攻撃にたいし、国民負担増反対・社会保障制度の拡充の世論づくりをいっそう位置づけ福祉の拡充運動を積極的にすすめます。

<2>福祉制度の大改悪と並行して、1999年7月には地方分権一括法や中央省庁等改革基本法が成立し、財界奉仕の行政機構づくりが着々とすすめられています。すでに中央省庁の再編がおこなわれ、今では全国的に市町村合併と公務員制度大改悪が始まろうとしています。地方分権一括法は、地方分権の名でこれまでの「通達行政」を表面的に正していますが、国と自治体(地方)の税配分は従来のままで、中央集権の構造を実質的に強めています。
 ところで今日、長野県や鳥取県、高知県など地方分権の名のもとに、地方の実情にあわせた先駆的な自治体も誕生しています。福祉保育労大阪地方本部は、住民を無視したような市町村合併には反対し、福祉拡充の要求実現にむけて2年後の大阪府知事選挙や革新・民主の自治体づくりと、恒常的に自治体への運動を積極的にとりくみます。

<3>福祉サービスが福祉職員の日々のしごとを通して実現することを考えたとき、職員の労働条件は福祉サービスの質をきめる必須条件です。ところが、住民の福祉要求の切実さに比べ、福祉の質をきめる労働条件問題は十分に社会化されていません。
 福祉保育労大阪地方本部は、福祉水準の向上の裏付としての福祉労働者の総合的な専門労働のあり方と労働条件問題を社会的に提起できるよう討議を深めていきます。そして、福祉労働者の賃金向上や職員増員・労働時間短縮等について社会的な支持をひろげる運動を労使間で協議し、業界や住民と一緒になって世論化するとりくみを強化していきます。

(3)福祉改悪路線が日本の軍国主義化や平和の危機、反民主主義の逆風と一連に進行している今日、労働組合運動としての政治課題のとりくみをいっそう強化していきます。そのためにも組合員の学習活動を強化し、全労連・大阪労連の提起する『国民春闘』(国民大運動)への積極的な参加や他団体と共同した世論づくり運動に参加していきます。
<1>民間企業の終身雇用や年功序列賃金など日本的雇用形態が崩壊し、それが曲がりなりにも残っている公務員にたいし集中的な攻撃が始まっているのが今日の労働者と労働組合がおかれた状態です。このような労働者の状態は、生産拠点を海外にうつし中小企業を切りすてる大企業と、それを推進する小泉内閣の「構造改革」路線がつくり出したものです。
 長期につづく深刻な不況と医療・年金・福祉など社会保障制度の大改悪は、いまや労働者だけでなく国民に総犠牲を強いています。そうであればこそ、これまでの企業だけを相手にした労働組合運動は「はたらくルールの確立」「真の最低賃金制度の確立」「賃金と社会保障制度で国民生活をまもる」等、制度の確立を求めて国民総行動の先頭に立つことが求められます。このような制度確立の実現をもとめる運動は、国政や自治体での「政治を国民の手にとりもどす」課題でもあります。
 福祉保育労大阪地方本部は中央本部や大阪労連に結集し、政府や自治体にたいし「社会的な働くルールの確立」「社会保障制度の確立」「平和と民主主義の擁護」など国民課題を全国民的な運動としてすすめる『国民総行動』型の労働組合運動をめざして、21世紀の新しい労働組合運動のあり方を積極的に追求していきます。

<2>『国民総行動』型の労働組合運動の発展をめざし、職場や地域・地方・政府にむけて同時並行に諸課題をとりくみ、住民とともに運動をつくりだし国民世論の力で要求実現をせまります。
福祉保育労大阪地方本部は、本部・支部・分(班)会のそれぞれのレベルで経営や業界・地域住民との対話を日常的にすすめ、おおきな幅広い共同をめざします。また、大阪労連や地域労連に積極的に結集し、他産業労働者と一緒になって『国民総行動』型の労働組合運動を職場と地域からおこしていきます。このとりくみに、すべての組合員と分(班)会が主体的に参加できるよう学習と討論を重視していきます。

(4)4万人をこえる大阪府下の民間福祉労働者を対象に、福祉保育労大阪地方本部の拡大強化を組合員みんなの課題として位置づけ、最重点課題としてとりくみを強化していきます。当面、切実な要求実現の社会的“力”として、3,000人の福祉保育労大阪地方本部の確立をいそぎます。
<1>福祉拡充をもとめる国民の声と「行革」による「福祉市場化」の下で、民間福祉職場とそこに働く職員は急増しています。その中でも、とりわけ非常勤・パートなどの不安定雇用職員の急増は、おおきな特徴となっています。これまで民間社会福祉といえば社会福祉法人を意味していましたが、今日の民間福祉はそれに加え企業、医療法人、生協、NPO(非営利組織)等々、いろいろな経営形態をとっています。
福祉保育労大阪地方本部は経営形態や地域、業種をこえて、すべての福祉労働者を組織対象に早期に3,000人の組織づくりをめざします。とりわけ、非常勤・パートなどの不安定雇用労働者とホームヘルパーの組織拡大を意欲的・計画的にすべての分(班)会・支部でとりくみを強化します。

<2>大阪地方本部の基礎単位は、法人(経営)を単位にした分会です。その点では、すべての分会が過半数以上の職員の組織化にむけて、正規・非正規の区別なく組織化していくことを基本とします。
また、3,000人台の大阪地方本部の土台として支部を位置づけ、支部事務所や支部専従者の配置などを大阪地方本部の課題として位置づけ中期計画をもった大阪地方本部の体制強化をめざします。

第3章  重点課題と取りくみの具体化

(1) 賃上げのとりくみ
<1>福祉市場化がすすめられる下で、職場の要求に根ざした賃金闘争のあり方を根本的に検討していきます。この場合、職場での個々人の賃金については現行水準を維持することを原則とし、経営の条件を十分に分析して柔軟に対応していきます。賃金体系を見直す場合は、労使合意を基本に実施させていきます。
また、大阪府公私間格差是正制度が2002年度では暫定率75%に改悪されていることをリアルに受け止め、経営独自の賃金体系を検討する場合は「福祉職給与表」も検討素材の一つとしていきます。「能力」給をはじめとした各種の成績主義賃金の導入には反対します。

<2>財源となる措置費、介護報酬、支援費、自治体補助金等の賃金原資の引き上げをめざして、経営・業界との対話による労使共同や、住民との対話と共同・署名運動など国民の世論づくりを意識的・系統的にとりくみます。
この世論づくりでは、当面、福祉労働者の賃金を「職務給」賃金として20歳・20万円(年収340万円)、38歳・40万円(年収680万円)、50歳・50万円(年収840万円)、非常勤・パート職員の
時給1,800円、日給12.000円を社会的要求としてかかげて運動化していきます。

<3>賃上げ闘争の原則として「底上げ要求」をすえ、全国一律最低賃金制度の確立を全労働者・国民課題として追求していきます。そのためにも、「最低生活費体験」調査や家計費調査、全労連・大阪労連のとりくむ『最低賃金改善署名』(仮称)を組合員ひとり平均15筆目標でとりくみます。

(2) 労働時間短縮・職員増員のとりくみ
<1>厚生労働省が経営に出している「残業規制」通達にもとづき、経営にたいし日々の労働時間を正確に把握させていきます。そのために、ICカード・タイムカード導入を原則とし、それができない場合は自己申告制を要求していきます。
「残業規制」通達の適用については、 労働時間を正確に把握することを最重点の課題とし実際の割増賃金の支払いとは区別していきます。具体的にはカウントされた時間外労働については割増賃金を要求していきます。ただし、交渉を通じて経営の条件を十分に配慮し弾力的に対応し、福祉労働者の長時間労働の実態について労使の共通認識をつくり出すことを目標とします。また、このことを通じて、福祉労働のあり方についても労使の協議事項とし、業務改善をはかっていきます。
 以上のとりくみを通じて、民間福祉労働者の労働時
間の実態を労使が共同して正確に把握し、職員増員の
必要性を社会的にうったえる武器にしていきます。

<2>労働時間短縮や職員増の課題をとりくむにあたり、労働時間とボランティア活動を労働者みずからが自覚的に区分するための討議を、職場で積極的に組織していきます。
また、利用者児の処遇困難の実態を明らかにし、処遇向上と労働時間短縮を結びつけた職員増の必要性や要求を社会世論の力で実現させていきます。社会世論づくりのためにも、中央本部の「1万人レポート」運動や職場黒書づくり運動を引きつづきとりくみます。また、政府・自治体への要求運動を強めます。
また、福祉労働者の職員増運動を、全労働者的な課題となっている「雇用をまもり拡大する」運動に結びつけ、労働時間短縮・職員増・雇用拡大の課題を三位一体にして社会運動化していきます。また、政府・自治体への要求運動を強めます。

<3>福祉職員の健康破壊がすすむ現状のもとで、大阪地方本部として「職業病・メンタルへルス集団検診」調査を実施していきます。実施にあたっては実行委員会を組織し、支部と種別協議会を単位に実行委員を選び受診者を組織していきます。
また、50人以上の職場には健康安全委員会の設置を経営に要求するとともに、それ以下の職場でも健康安全委員の設置を要求し、大阪健康安全センターの開講する「健康安全講座」への参加を業務(参加費負担を含む)保障を要求していきます。

(3)解雇撤回・はたらく権利擁護のとりくみ
<1>“駆け込み”争議が急増している今日、解雇者個人を守る運動だけでなく、とりくみを通して組織拡大をはかり大阪府下の民間福祉職場で理不尽な不当解雇がおきない社会的力(福祉保育労の社会的影響力)をつくりあげていきます。
 当面、聖家族の家・田中さん解雇撤回闘争、青桐保育園・石川さん解雇撤回闘争の早期解決をめざします。

<2>南大阪法律事務所と顧問弁護士契約を結び、裁判所や地方労働委員会など係争事件がおきた場合に機敏に対応できる体制をつくっていきます。また、問題や争議のおきた職場にたいし、支部でも担当者を配置して地域的な運動で問題の早期解決をはかっていきます。

<3>すべての分(班)会・職場で権利擁護についての点検活動をおこない、経営の一方的な労働条件の変更や切り下げには反対し、労使交渉と合意にもとづいて変更させていきます。
今年度は、すべての職場で就業規則の点検活動をおこない労基法の抵触部分を改善させるとともに、36協定や労働協約の締結を運動化していきます。そのための学習会と「就業規則・労働協約」運動の手引きを、大阪地方本部で作成します。

(4) 制度改善をはじめとした「国民総行動」運動のとりくみ
(一)大阪府と府下自治体にむけた福祉拡充の運動のとりくみ
<1>暫定率75%実施の「公私間格差是正制度」改悪反対にむけて、大阪府への運動をいっそう強化していきます。この課題について、福祉保育労大阪地方本部として業界や同友会に共同を呼びかけるとともに定期的な府庁前宣伝行動、分(班)会・支部での職場の労使懇談や未組織職場へのローラー作戦などをとりくんでいきます。さらに、すべての組合員が行動に参加できるように学習と討議を組織します。

<2>金剛コロニーの民営化、大阪福祉事業財団へ委託された「府立施設」の売却問題など分会の個別課題を、福祉保育労大阪地方部の課題として位置づけとりくみを強化します。また、そのためにも、引きつづき「府立施設の存続・発展をすすめる会」運動に積極的に参加し共同の運動をひろげます。

<3>府民の切実な福祉拡充のねがいと民間福祉労働
者の要求を結びつけ、府民要求連絡会(府民連)や社保協をはじめとした府的共同と運動に積極的に参加していきます。

(二)『国民総行動』型運動への積極的な参加と、とりくみについて
<1>2002年国民春闘の総括にたってとりくまれる『国民総行動』型運動(春闘)に、福祉保育労大阪地方本部は積極的に参加します。また、この運動を通して、地域運動に住民の福祉拡充と福祉労働者の労働条件改善の課題を積極的に持ちこんでいきます。
 中央本部の提起する「福祉拡充」署名(3年間のうちに100万筆目標・大阪地本20万筆)と、全労連の「働くルール」署名(労働者の過半数を目標・大阪地本5万筆)の最終年の今年度、この二つの全国署名の目標達成にむけ、職場で再討議ととりくみの強化をはかります。

<2>今日ほど、国民生活と社会福祉・社会保障制度、日本の将来が、政治と直結していることが国民のだれの目にも明らかになっている時代はありません。
 その点では、「国民に痛み」を求め「構造改革なくして景気回復なし」とうそぶく小泉内閣から、『国民が主人公』の政治変革を労働組合運動の中心課題の一つにすえた運動をいっそう強化していきます。そのためにも平和の課題や民主主義をまもる運動に、組合員のひとり一人が積極的に参加できるように討議と学習、宣伝活動を強化していきます。
また、2年後に予定されている大阪府知事選挙には「明るい民主府政をつくる会」に結集して準備活動に参加するとともに、国会解散・総選挙の世論づくりのための宣伝・学習・討議をすべての組合員を対象に組織していきます。

(5)福祉保育労大阪地方本部の拡大強化について
(一)3,000人台の福祉保育労大阪地方本部の拡大強化にむけて
<1>2,000人台の大阪地方本部づくりを達成した今日、組合員の5割増の目標をかかげ3,000人台の福祉保育労大阪地方本部づくりをいっきに達成していきます。
そのための条件として、支部のいっそうの確立と次代をになう青年労働者を結集した青年部のいっそうの強化をはかります。また「大阪のヘルパー労組」の強化・拡大をはかります。「ともしび」の定期発行と紙面の充実、「福祉のひろば」(総合福祉研究所・発行)の定期読者と研究所会員の拡大等をとりくんでいきます。
 また、組合員が確信をもって組合活動や運動に参加できるように、地方本部・支部・分(班)会のそれぞれで学習活動を強化していきます。

<2>地方本部と支部の機能充実と、役割分担を明確にできるように、支部体制の強化をめざします。支部体制の強化にあたっては支部関係者と協議して計画をつくり、支部事務所の設置や支部専従者の配置を地方本部の責任ですすめます。この計画は中期計画(3〜5年)のものとし、組織拡大と財政計画・幹部づくりを含めた総合計画を本部委員会で策定し、とりくみをすすめます。

<3>種別協議会が今日の情勢にあった活動をいっそうすすめられるように、支部と分会で位置づけを明確にし、支部を単位に種別協議会の役員派遣をすすめていきます。また、分(班)会は、積極的に種別協議会の諸活動に参加し、とりわけ業種をめぐる情報交換と要求・政策づくりを成功させていきます。
 「パート・非常勤部会」をたちあげて「給食調理部会」とともに、種別協議会に準じた位置づけで活動を強化していきます。
 「第17回大阪社会福祉研究交流集会」の実施にむけて、実行委員会を発足し準備をしていきます。

<4>組合員の8割をしめる女性労働者対象に、「婦人部」のいっそうの活動強化をすすめます。婦人部の「女性部」への名称変更は婦人部で十分に討議して決めるとともに、支部を単位に地方本部「婦人部」役員を派遣して役員会を充実させるとともに、支部婦人部の確立と分会には婦人部担当者を配置していきます。

(二)財政の確立、福祉保育労共済のとりくみ
<1>支部の活動は200円の支部組合費をもとに運営されていますが、今後、計画的に大阪地方本部の一般財政の一部を投入し、支部体制強化をめざします。 
また、分会財政の健全化と安全管理を徹底するために、分会財政の労金口座開設や財政担当者会議を開いていきます。

<2>事務所のリニューアル、パソコン購入とラン設定等についての検討をおこない、大阪地方本部の機能強化をはかっていきます。
 また、組合結成50周年を記念して「レセプション実行委員会」「歴史編纂委員会」を発足させます。なお、「福祉保育労大阪地方本部のあゆみ」(仮称)は数年の準備でとりくんでいきます。

<3>すべての分会が組織共済に加入し、多くの組合員の生命・医療共済、年金・火災・自動車等の共済加入をめざします。