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07国民春闘 ・付属文書 賃金改善の取り組みについて(案)〜目次〜
07国民春闘 ・付属文書 賃金改善の取り組みについて(案)全国福祉保育労働組合大阪地方本部 はじめに06年4月から障害者施設で、また10月からは障害児施設でも、障害者自立支援制度が実施されました。高齢者関係職場だけではなく、障害関係職場でも利用契約制度が実施され、保育職場でも認定こども園制度が導入される中、福祉労働者の雇用は多様化し、非正規職員が急増しています。福祉労働者の賃金の切り下げ、労働条件の悪化は、今どこの福祉職場でも人出不足問題として現れてきています。現在、07年4月にむけて各職場で賃金改定をめぐり、労使での交渉・協議、検討会がすすめられていますが、07春闘では、@格差と貧困の広がり是正のための最低賃金の引き上げ、A福祉人材確保対策との関連での人件費財源の引き上げ、B職場内での人件費配分のとりくみが重要となってきています。 06年国民春闘で、付属文書「06年の賃金・労働条件改善闘争について」を提案しましたが、その内容を踏まえて、検討しなければならない課題、新たな政府や自治体の福祉動向などを書きくわえ、「07国民春闘・賃金改善のとりくみについて」を提案します。大阪地方本部は、来年度の法人の財政見通しが明らかになり、労使で法人財政について共通認識がもてる条件をねばり強く追求し、このような条件の下で職場・法人での賃金(体系)確定のとりくみをすすめていくことを方針とします。 I.労働者の賃金と生活の状況1.8年連続で下がり続ける労働者の賃金@.日本の給与所得者の平均給与は437万円日本の給与所得者数は、4,494万人で、その平均給与は437万円(対前年度比2万円の減少)となっており、8年連続の減少となっています。男性2,774万人、女性は1,720万人で、その平均給与は男性で538万円、女性は273万円です。給与所得者の平均年齢は43.8歳で、平均勤続年数は11.8年(男性は13.2年、女性は9.年)となっています。給与所得300万円以下の人は全体で37.6%(1691万人)で、男性は20.4%(564万人)、それに対し女性は65.5%(1,128万人)となっています。300万円以下の給与所得者1,691万人は、総数のおおよそ3割で、3人に1人の労働者となっています。国民・労働者の生活は確実に悪化し、格差社会と貧困の広がりとなって現れています。 「2005年分民間給与実態調査結果」2006年9月に国税庁発表 A. 庶民には増税、大企業には減税 12月1日に政府税制調査会が2007年度の税制「改正」に関する答申を安倍首相に提出しました。庶民には増税、大企業には減税という逆立ちした税制「改正」で、所得税(1月から廃止)・住民税(6月から廃止)の定率減税を全廃し、1兆7千億円を負担させる一方、空前の大もうけをあげている大企業には法人実効税率の引き下げを検討課題にあげました。法人実効税率とは法人税(国税)、法人住民税(地方税),法人事業税(地方税)の3税合計の税率ですが、大企業優遇税制はそのままで、全体で5兆円規模の減税を検討しています。また減価償却制度の拡充なども盛り込んでいます。大企業の減税規模に匹敵する消費税の増税については、「各税目の在り方を検討していく」として、参議院選挙後の検討に含みを持たせています。 B. 「算出基準見直し」ですえ置きの人事院勧告 06年4月より俸給表水準が全体的に4.8%引き下げられ、福祉職俸給表は号俸の間差が細かく4分割されました。これは能力給の導入により、昇給幅に差をつけるためのものです。 06年8月に出された人事院勧告は、月例給と期末・勤勉手当が前年度水準で据え置きとなりました。短大卒初任給格付け(1級11号俸)は159,700円で、地域手当10%を加えると175,670円です。一時金4.45ヶ月とすると、年間約289万円となりますので、年収は300万円以下です。 民間企業の業績が上向く中で、比較対象企業規模を「100人以上」から「50人以上」に変更する「算出基準見直し」により、実質1.12%、一時金0.05カ月アップのはずが、改定なしの勧告となっています。扶養手当は少子化対策として第3子目以降を第2子と同額にして引き上げています。 人事院は国家公務員の賃金抑制と物言わぬ公務員づくりを目的に、給与構造改革と能力給導入などにより、総人件費の抑制をすすめています。「職員の士気を確保し、効率的な人事管理を推進するため、年功序列的な給与上昇要因を抑制した給与システムを提供するとともに、職務・職責や勤務実績に応じた適切な給与を確保していく必要がある」というのが基本的考え方です。 C. 50歳で290,500円の職場実態 06春闘にもとづく06年4月での組織内職場の賃金実態は以下の通りです。
※46職場。無認可作業所など賃金表なしのところもあり。 ※福祉職俸給表は1-29から2-1へ、2-21から3-1へ、3-9から4-1へワタリを実施し、4級止まり。 ※市公私間は3-23から2-15へワタリを実施。 特徴としては、職場の賃金の最低額はどのポイントでも、福祉職俸給表や市公私間より低く、勤続が長くなれば、その差額はより大きくなっています。初任給は比較的高くして、勤続が長くなれば頭打ちの傾向がでています。 2.福祉の動向と人件費財源について政治は「税金をどこから集めて、どこに使うか」が基本です。私たちが支払う税金や企業が支払う税金は、社会保障の国庫負担金、福祉施設の建設や運営費・人件費などの財源にあてられています。このような所得の再分配が社会福祉の水準を維持しています。日本経団連は、世界規模での企業活動を展開するにあたり、法人税率や社会保険の事業主負担分が企業の足かせになっていることを主張し続けています。政府はそれに応え、1999年に法人税率を40%から30%にまでにさげ(この年に消費税が5%になる)、また所得税の最高税率を50%から37%へと大幅に引き下げました。今また法人実効税率を40%から30%にひきさげ、さらに減価償却制度の見直すことにより、5兆7,000億円規模の減税を主張しています。 政府は社会保障改革で今後5年間で、1兆1千億円を削減する計画で、07年度は生活保護費の母子加算の削減やリバ−スモ−ゲ−ジ(持ち家等を担保とした生活資金貸付制度)の創設で,2,200億円を削減することを検討しています。最終的には、社会保障・社会福祉の財源不足分を消費税増税に求めていくのが政府の方針です。消費税増税は低所得者になればなるほど重い税金で、消費税率が上がれば上がるほど深刻な状況をつくりだしていくことは明らかです。 高齢者・障害者・児童福祉にしてもサービス利用を抑制するしくみをつくり、利用者負担を増大させていっています。それでも、2005年4月現在、全国で約2万3000人と保育所待機児がおり、保育所建設はこれからも続くことが予測されます。高齢化がすすみ高齢者のサービスや、障害者のサービスなどの社会福祉予算は増え続けることになります。その一方で、規制を緩和させ、民間営利企業を参入させていく方向性が強まっています。 @.保育・措置施設関係06年10月から直接契約と保育料の自由設定を認める認定こども園制度が導入されました。認定こども園の保育にかかわる費用は、ハード・ソフト交付金や保育所運営費等に含まれていますが、金額は明示されていません。07年度予算概算要求の保育所関係予算は、3,916億円(8.3%増)となっています。05年度に創設されたハード・ソフト交付金は、両方とも増額要求されています。次世代育成支援対策施設整備交付金での保育所整備費(ハード交付金)は200億円(42.9%増)、次世代育成支援対策のソフト交付金は440億円(29.6%増)です。ソフト交付金では、「病児・病後児保育事業(保育所自園型)」や「こんにちは赤ちゃん事業」が新規事業として盛り込まれています。民間保育所の運営費は4.6%増の3,121億円が要求されていますが、乳児保育促進事業補助金は要求額からはずされ、廃止の方向になっています。 ハード交付金は厚生労働省が施設整備交付金請求にあたってのガイドラインをつくり、市町村は各施設に対し、ガイドラインにそった計画書を提出させ、市町村の計画として都道府県に上げ、都道府県は市町村の計画をまとめ、厚生労働省に提出する仕組みです。保育整備にかかる総予算は決まっているので、厚生労働省はガイドラインにそって市町村計画を点数化し、その点数化に基づいて予算をふりわけ、都道府県を通して、市町村がうけとることになります。保育所整備費の配分は市町村に任されていますが、保育所整備費はおおむね建設費の半分程度となっています。以前の保育所の建設費や改築費の補助金は、国が1/2、都道府県が1/4、自己資金が1/4と決まっていましたが、ハード交付金による保育所整備費の削減は、待機児童が増え続ける大阪においては、待機児解消がすすまない大きな要因となっています。また、ソフト交付金も同じような仕組みの補助金のシステムとなっています。 04年の児童福祉法改正で児童養護施設と乳児院の入所児童年齢の要件緩和が行われ、児童養護施設の目的に「退所した者への支援」がくわえられました。厚生労働省は同年から「小規模グル−プケア」、「被虐待児加算」及び「家庭支援専門相談員」の常勤配置を、06年度からは、心理職の常勤配置や「大学進学等自立生活支度費」等の予算措置を行いました。また04年度から、暫定定員制の基礎となる開差是正基準が17%から10%に引きさげられました。 A.障害関係障害者自立支援制度は、これまでの障害者施策を大きく変質させ、サービスの給付体系や報酬体系をはじめ、認定の方法・負担のあり方など変えて、09年度の見直しの時期に介護保険との「統合」ができる内容にしようとしています。「応能負担」から「応益負担」になり、調理にかかわる高熱水費や食材、人件費までも利用者負担に変りました。また、施設の報酬単価がひきさげられ、日割り単価が導入され、「介護」や「訓練」、「デイサービス」、「居宅介護」などが点数化されることにより報酬が決まる仕組みとなりました。報酬が不安定とならざるを得ないことから、職員配置基準は「個別支援計画作成責任者」のみが必置となり、その他の職員は「非常勤」等でも可能となりました。障害児関係も、06年10月から自立支援制度に組み入れられました。 措置制度で眠り込まされていた障害者・家族の権利が、支援費制度で顕在化し、障害者自 立支援制度になると、利用料の1割負担反対で、障害関係者が、思想、信条の違いを超えて大同団結し、障害者団体・家族の運動が大きく広がっています。06年度補正予算で利用者負担の軽減措置や障害者施設への補助を増額させるなど政府を動かしました。 B.高齢関係介護報酬の改定の前倒しのかたちで05年10月1日より食費・居住費などのホテルコストが導入され、収入の違いはあるものの特別養護老人ホームなどの利用者からは月々2万円から5万円もの利用料負担が強化されました。厚生労働省は、2006年度の介護報酬改定を全体で0.5%引き下げました。在宅サービスのうち要介護3〜5の中重度者むけは4%増、軽度者むけは5%減とし、05年10月にマイナス改定となった施設サービスは現状維持となっています。同じ時期、社会福祉法人に働く介護職員の退職共済会への公的資金投入が廃止されました。施設が公的資金分も支払うことで、継続が可能となりましたが、その一方で職場単位での脱退が可能となりました。 2006年度介護保険見直しでは、訪問介護サ−ビス・生活支援の介護報酬が1時間30分相当額で打ち切り。介護予防サ−ビスが導入されましたが、介護予防のプランを立てる地域包括支援センタ−が完全にパンクして混乱したり、同居家族のいる高齢者が介護予防生活支援サ−ビスをうけられなくなりました。また介護予防サ−ビスには筋トレなど高齢者に機能訓練を強いています。 C.経営関係05年1月に厚生労働省は「社会福祉法人が経営する社会福祉施設における運営費の運用及び指導の一部改正について」の通知を出し、社会福祉施設の運営での規制緩和をよりすすめました。通知の中では、『自主的・自律的経営を推進する観点から、・・・運営の一層の弾力運用を図る』としています。その主な内容は、 ア.施設における人件費、管理費、事業費の相互乗り入れができる。 イ.「修繕費積立金」と「備品等購入積立金」が「施設整備等積立金」に一本化され、計画に基づき年度当初から、増改築にともなう土地取得に要する費用にあてることができる。また、各積立金の目的外使用も理事会の承認で可能。 ウ.民間施設給与等改善費として加算された額を限度として、同一法人が運営する社会福祉施設等の独立行政法人福祉医療機構からの借金返済や利息にあてることができる。(給与等改善費の目安は、12ページの05年保育所モデルでは年間460万円) エ.同一法人がおこなう指定居宅サービス事業等などの公益事業に対し、当該施設の剰余金(前期末支払資金残高)の10%を限度に充当とすることができる。 オ.当該年度の運営費(措置費)収入の30%の剰余金を残すことが可能。 となっています。政府・厚生労働省によって市場化がすすめられていますが、施設運営の裁量が広がったことにより、社会福祉法人の運営に対する基本的姿勢が大きく問われています。 06年9月に厚生労働省・「社会福祉法人経営研究会」が社会福祉法人改革に向けて、「社会福祉法人経営の現状と課題」−新たな時代における福祉経営の確立に向けての基礎作業−という報告をまとめ発表しました。主な内容は ・「合併・事業譲渡・協業化の推進」や「質の低い法人・経営者の退出誘導」等によって「一法人一施設」という零細な社会福祉法人の淘汰 ・措置費の更なる弾力化と使途制限の緩和、収益事業規制の見直しによる「経営能力の向上」 ・「新たな福祉産業政策」の確立を求めて社会福祉を非営利の公務公共サ−ビスから切り離す などとなっており、大規模法人化と収益能力の向上、福祉産業化に向けての社会福祉法人改革の方向を打ち出しています。 D.自治体関係総務省は、05年3月29日、「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針(「新地方行革指針」)を策定し、各自治体に通知しました。この「指針」は、「三位一体改革」で 地方交付金の大幅削減に自治体を対応させ、住民不在のリストラ計画を地方におしつけています。総務省は「指針」で各自治体に、05年度から09年度までの具体的なとりくみを明示した「集中改革プラン」をつくること求めました。主な内容は、事務事業の再編・整理、指定管理者制度を含む民間委託等の推進、市職員の定員削減目標の設定などです。 大阪府・市でもこの「集中改革プラン」にそった「行財政改革プラン」を作成し、効率性優先の福祉切り捨てをすすめています。自治体は施設運営や事業に対する独自補助金をどうするのかが問題となっており、自治体への運動が重要になっています。 3.大阪府、大阪市、中核市の動向について(1)大阪府の動向 −全国で唯一のマイナス人勧−大阪では賃金の平均年額は433万円で、男性は年額546.6万円(5人以上の全産業の現金給与総額)、女性は258万円となっています。男女格差をみると、男性を100に対し女性は47.3%と半分以下で、年額の差は約288万円になっています。福祉労働者の賃金実態では、産業分類別で「医療・福祉」の賃金をみると、現金給与総額の1人平均月額は5人以上で31.9万円となっています。(毎月勤労統計地方調査)大阪府が出している賃金資料/平成17年(1月〜12月)大阪府人事委員会は10月にマイナス1.46%の勧告をおこないました。人事院勧告が据え置きなのに、全国でも大阪府と大阪市だけがマイナス勧告となっています。府職員にも国家公務員と同様の査定給の導入が検討されており、また一般職員で月額30万円の頭打ちが狙われています。国家公務員の査定給と同様の賃金体系を予定する府下自治体も少なくありません。 大阪府は06年11月に「府行財政改革プログラム(素案)」を発表し、2010年度に赤字構造から脱却し、単年度黒字を実現するとして、段階的に400億円を抑制する歳出見直しを打ち出しました。その内容は大幅な職員削減と総人件費抑制、府立高校授業料の引き上げや福祉見直しで、関空2期事業など大規模開発事業などは継続することになっています。05年3月に「民間社会福祉施設従事職員給与改善費」が廃止され、05年4月より「大阪府民間社会福祉施設事業費等補助金」に変りました。平成16年度の「給与改善費」の決算額は14億円に対し、平成17年度当初予算の「事業費等補助金」は21億円となっています。 介護職員、支援費職員を除く職員を対象に、勤続年数などが加味された「民間社会福祉施設経営安定化推進事業」の17年度当初の予算は9億5,796万円に対し、執行額は8億8000万円で、18年度当初予算は8億7000万円と減額になっています。「民間社会福祉施設経営安定化推進事業」の内容は下記の通りです。 ○職員の勤続年数が長い施設に対する補助金(保育所以外)
○保育所職場での府独自の補助金は、「10年以上12年未満」の2%が最高となっている。 この補助金の中には、調整手当10%が保障されていました。調整手当が廃止され、「地域手当」がこの補助金の中に反映されるのか、されないのかは不明です。07年度は「民間社会福祉施設経営安定化推進事業」補助金の激変緩和措置の最後の年になります。「府行財政改革プログラム(素案)」では、この補助金も見直しの対象になっており、地域手当への変更もふくめて08年度に検討して09年度から見直し実施の予定になっています。 (2)大阪市・中核市の動向大阪市人事委員会も9月に、本来なら0.14%、一時金0.05ヶ月アップの報告となるところを、マイナス1.96%の勧告をしました。市職員については所要額の調整という表現で、4月に遡り本俸平均額−1.66%、一時金−1.96%で12月より調整が実施されました。扶養手当の引き上げはあるものの、マイナス勧告は開発行政の失敗のツケを職員に負担させるものです。大阪市の場合、「民間社会福祉施設職員給与改善費補助金」は継続されています。しかし、第3セクターの失敗、三位一体改革などでの市独自の持ち出しがふえることから、この「補助金」がどうなるかは、不透明の状況です。平成18年度から前年度決算における高額繰越金等(総収入額の40%の金額)を有している施設については、補助金の不交付の措置がとられています。また平成18年度には、57歳を定昇停止年齢にするなどの改悪が行われています。 大阪市は民間社会福祉事業団体職員の人件費改定について、06年3月に「平成18年度の団体等に対する事業委託等の取扱いについて」で、「各団体の自主判断とし、これに伴う事業委託料の変更はおこなわない」ことを通知しました。また「委託料が確定している契約の場合は委託料総額の範囲内で、人件費と物件費の流用を認める」こととしました。大阪市社会福祉協議会では、これまで市から団体に給与表が提示され、市職員と同率で賃金確定をおこなっていましたが、今年は給与表の提示がなく、市社協独自の給与表の提示にもとづき確定をすすめました。また大阪市身体障害者団体協議会も含め所要額の調整で余った人件費は、今まで市に返していましたが、今回は返さなくてもいいと云う事に変わっています。 市職員については、査定なしの人事考課が今年度より試行されていますが、大阪市社会福祉協議会では、人事考課と冬の一時金の査定が昨年度に試行で、今年度から本格的に実施されています。 06年4月から堺市は指定都市となりました。保育単価の市独自での上乗せと保育所にのみ産休代替制度を保障しています。中核市の動向では、東大阪市は、大阪府同様の制度で、高槻市もほぼ同様の制度になっています。 II.賃金改善とりくみの基本方針この間の賃金改定では、@公私間格差是正標準表を継続して使用する施設、A年齢、勤続、職務を賃金に反映した給与表を作成した施設、Bコロニーのような職能給を導入した施設、C福祉職俸給表を使用している施設などになっています。職能給を導入した施設を除き、労使の検討委員会を開催し、団体交渉で賃金改定がなされてきています。福祉保育労大阪地方本部は、公的福祉制度が充実されてこそ社会福祉法人やNPO法人、無認可事業にはたらく職員の労働諸条件も保障され、住民の福祉サービスや非営利の社会福祉法人経営も守られるという立場で運動をとりくんできました。政府が福祉制度の根幹の破壊や地方自治危機をつくりだしている今日、政府の「福祉市場化」路線や自治体の補助制度削減や縮小に反対し、引きつづき公的福祉制度の充実を重点課題としてとりくんでいきます。 公的福祉制度の充実は「住民が主人公のまちづくり」の課題の一つでもあり、住民の中にある切実な福祉要求実現の運動なしには実現することはできません。この点では、福祉サービスと福祉職場の劣悪な労働諸条件の実態を住民につたえ、地域住民の切実な福祉要求実現の運動と結びついた運動の展開が重要となっています。また、社会福祉法人の非営利性をまもり経営の発展をねがう経営者との労使共同のとりくみもいっそう重要視していく必要があります。 無認可・社会福祉法人にはたらく福祉労働者の賃金闘争は、全労働者的な「賃金底上げ運動」や「全国最低賃金引き上げ運動」に連動するとりくみがどうしても必要となります。あわせて、社会福祉の公的拡充と福祉労働者の賃金引き上げや労働条件改善が表裏関係にあり、社会福祉への公的財源投入を実現させるためには住民合意を得ていく運動が重要となります。 今日、福祉職場は人手不足問題に直面していますが、福祉労働者の賃金・労働条件の改善をすすめる実効性のある福祉人材確保対策が求められています。福祉労働者の人件費財源は措置費、保育所運営費、介護報酬、自立支援費、自治体補助金など、税金や保険料など公的なものであるだけに、福祉労働者全体の賃金・労働条件のあり方を科学的に明らかにし、住民福祉を実現するためにどれだけのコストを必要とするのか、人件費財源引き上げにむけた住民への説得力・世論形成が決定的に重要となります。 I.貧困と格差是正に向け、最低賃金の引き上げ闘争をすすめます。日本の最低賃金制は、地域別最低賃金を基本とし、金額は47都道府県ごとに決められます。06年度の地域別最低賃金は、719円(東京)〜610円(青森、岩手、秋田、沖縄)で、大阪は712円です。加重平均は673円、月額に換算すると、11万5,635円です。ヨ−ロッパの主要国の最低賃金は17万円台から20万円台ですから、日本は最低の最低賃金国になっていっています。すべての労働者が人間らしい生活水準を保障できるように、全労連・大阪労連に結集して全国一律最低賃金制度の確立と最低賃金の引き上げをめざします。 II.福祉人材確保対策と人件費財源引き上げの運動を統一してすすめます厚生労働省は07年の次期通常国会に、介護福祉士及び社会福祉士法などの改正法案を提出する方針です。また1月からは、社会福祉法にもとづく福祉人材確保「基本指針」の見直しを検討しています。現在の「基本指針」は「社会福祉事業を経営する者の行うべき措置」として、職員処遇の向上のために「職務内容、公務員の給与水準及び地域の賃金状況を勘案するなど、人材確保が図られるような適切な給与水準の確保に努めること」などを指針としてあげています。厚生労働省は民間福祉労働者の賃金は、公務員準拠になっていると言いながら、人件費の算定基準がなにか、算定の仕方については明らかにしてはいません。厚生労働省が基本指針の見直しをはじめるのを機会に、財政措置を含む実効性のある福祉人材確保法・基本指針を作る運動と人件費財源を引き上げていく産別運動を統一してすすめていきます。 III.法人・職場内での人件費配分のとりくみ(1)現行の賃金実態を正確につかみます@ 現行の人件費を正確につかむために、正規職員、非正規職員、管理監督者のそれぞれの平均年齢、平均勤続年数、平均月額本俸、平均年収、各種手当等々の正確な数字を経営に明らかにさせ、分会としてこれらを把握していきます。A 経営に対し、2001年〜2005年度の毎年、総収入の中で人件費のしめる割合(人件費比率)を公開させ、上記の正規職員、非正規職員、管理監督者のそれぞれの人件費を対比し、正確に把握していきます。また、賃金については、名称・手当のいかんを問わず、「年間総収入」として正確に把握することを重視していきます。 B 同一賃金体系下(事務職員・直接処遇職員等)にある一般正規職員と、同様の非正規職員の構成比率と人件費比率の対比を正確に掌握し、「均等待遇」を検討する場合の実態を事前に把握していきます。 (2)非正規職員の「均等待遇」・時間賃金引き上げを重視してとりくみます人件費を考える場合、非正規職員の配置比率と人件費比率等についての検討も重要な課題です。これまで非正規職員の「均等待遇」を方針化しているだけに、非正規職員の位置づけや非正規職員の要求にも十分に耳をかたむけ、賃金闘争に反映させる必要があります。非正規職員の「均等待遇」は、賃金にかんするだけの問題ではありません。年金や健康保険・雇用保険の加入、退職金共済への加入など、正規労働者のもっている社会諸制度への加入をはじめ、本人の希望と経営の雇用条件があえば正規職員採用への道すじについても検討が必要です。賃金にかんしていえば、正規職員の平均「時間賃金」の同等水準が非正規職員の平均「時間賃金」となることを目標にしていきます。また、一時金についても、原則は正規職員並に平均「時間賃金」を基準にして財源化を求めていく必要があります。その他、年次有給休暇やその他の有給休暇についても、正規職員のもつ同等水準を目標にしていきます。 (3)管理監督者の手当も協議の対象とします@管理監督者の範囲を明確にさせ、管理監督者は非組合員に位置づけます。管理監督者とは、労働組合法第2条1項に規定する「監督的地位にある労働者」をいい、通常、就業規則では「管理監督者」として明記されています。大阪地方本部は管理監督者の組合加入を認めないからといって、反対に、組合員を理由にした職員の管理監督者の登用拒否など、不当労働行為は断じて認めません。大阪地方本部としての管理監督者の位置づけは、次代の法人経営を担う経営陣を組合内からも積極的に輩出させ「経営の民主化」をめざします。 A管理監督者の登用にあたっては、公平・公正、透明性を確保することが重要となります。小零細規模の経営体では難しい課題となりますが、この課題について労使間で十分に協議し、管理監督者登用にあたり公平・公正、透明性の確保を経営に要求していきます。この点では、登用試験の検討も一考に価します。 B管理監督者の「管理職手当」と中間職制への「職務手当」を、混同しないようにしていきます。「職務手当」は労働力の対価の一つであり、「職務手当」受領者は超勤手当支給の対象とします。 C「管理職手当」を“褒賞”と位置づけるのではなく、「経営・管理責任」労働力の再生産費として位置づけていきます。また、「管理職手当」は、定率あるいは定額はともかくとして、「通し号俸」の賃金体系を原則に「労使間で合意の得られる範囲の金額」の上積みを認めていきます。 (4)労使間で、収入総額の中での人件費比率の検討を協議していきます措置費では、保育所でみた場合おおむね事業費15%、管理費5〜8%、人件費約80%が積算されていました。しかし、規制緩和や福祉市場化路線の下では、この基準は積算基準としてみることはできても、総収入のなかでの人件費比率としては通用しなくなってきていています。これは措置費の弾力運用の幅がひろがり、施設を建替える場合の積立金(再生産費)を認められることからおきています。 加えて、「三位一体改革」、さらなる規制緩和などにより、より一層の市場化がすすめられています。その中で課題となるのは、下記の点です。 @ 施設建替えに要する費用全体(再生産費)について A 事業を拡大するための拡大再生産費について B 利用者が利用料を支払えないときの施設側の対応としての「貸倒引当金」について そうなれば総支出の中にしめる人件費の比率はいっそう下がったものとなります。この点では、労使間で積立金問題をどのように位置づけるのか、いっそう重要な課題となってきます。大阪地方本部は、「再生産費」や「貸倒引当金」など問題を「職場の存続」と「雇用の確保」という観点で位置づけ、経営が「裁量権」として一方的に決めていくことに反対し、労使協議の対象としていきます。 介護報酬と自立支援費に共通していえることは、積算基準とりわけ人件費積算が従来の措置費のように人事院勧告と連動しておらず、人件費積算そのものが不明となっていることです。そして、総体として総収入の中でしめる管理費が増額されており、その分人件費比率が下がっていることです。 国の積算基準だけでみれば、社会福祉法人の人件費比率は約50〜80%とみることができます。しかし、大阪の場合は国基準に加えて大阪府をはじめ各自治体の補助金が加わる点で、予算総収入のなかでの人件費比率をどこにおくのか、重要な検討課題となっています。 社会福祉法人経営をみたとき、国基準、自治体補助、法人独自の努力(寄付金、利用者負担金等)の総収入の中での比率を明らかにし、それとの対比で人件費比率、再生産費、日常管理費、事業費の配分比率の検討が必要となります。これらの要素は、法人の規模や業種、これまでの法人のあゆみと条件等々、個別的要素を強くもっています。こうした点も踏まえて、07春闘では総収入の中で人件費のしめる割合について、大阪市内の公私間適用職場とそれ以外の職場について最低基準の検討・協議をしていきます。 (5)能力給には断固反対します。大阪地方本部は、この間、事あるごとに賃金体系の見直しにかんして、成績評価や人事考課の導入による賃金体系は認めない方針を打ちだしてきました。「成績給」賃金体系には、おおきく2つの問題点があります。その第1は、利用者住民への福祉サービスは個々の労働者の労働が集団として絡み合ってこそ、有効なサービスとして発揮される点です。集団としての労働力が発揮されてこそ、福祉労働の有効性がいちだんと増すことを考えたとき、福祉労働を個別に評価することは集団労働そのものを破壊し、住民や利用者の福祉サービスに有害なものとなってしまいます。第2に、かりに成績評価をするとしていったい何を基準に評価するのか、誰が評価するのか等々、評価の客観性や科学性などまったく存在しません。客観性や科学性ない基準をもとに評価するということは、使用者にとって都合のよい労働者づくりや労務管理を目的にしたもの以外の何ものでもありません。 この点で、あらためて成績給や人事考課の導入は、福祉職場が福祉職場でなくなり、福祉労働が福祉労働でなくなることになり断じて認めることはできないことを強調する必要があります。 今日の社会福祉の基礎構造改革は、利用者・家族、経営者、労働者にとって耐えがたい状況をおしつけるものとなっています。そうであるならば、利用者、家族と経営者、労働者の徹底した合意形成がいままで以上に必要です。 06春闘にあたっての「全労連統一要求書」
「2006年国民春闘」大阪地方本部統一要求の申し入れ
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-全国福祉保育労働組合大阪地方本部- |