■運動方針・05年春闘議案■ 戻る



〜目次〜
はじめに ― 50年の節目をむかえる“春闘”

【1】 05春闘をとりまく情勢
(1)小泉内閣の露骨な対米追随路線と、緊急課題となっている憲法改悪反対の運動
(2)長期不況のもとでも大企業は大儲け、国民の貧富の格差はますます拡大する
(3)地方自治と社会福祉制度の総破壊をめざす「三位一体補助金改革」
(4)消費税増税と社会保障制度の大改悪

【2】 05春闘の要求と重点課題
(1)国・自治体の社会福祉攻撃が強められ、社会福祉法人経営の収入が全般的に縮小するもとでの賃金・労働条件については、賃金「底上げ」、非正規職員の“均等待遇”実現を軸にして賃金・労働条件改善の運動をとりくみます
(2)社会保障制度の総破壊を目的とした『社会保険主義化』や“社会保障充実”を理由とした消費税率引き上げ等、いかなる税負担・「応益負担の強化」に反対します。また、「国民・住民が主人公」の財政切りかえを国・自治体に要求し、社会世論化していきます
(3)自衛隊のイラクからの早期撤退と、憲法の改悪反対運動は大阪地方本部の総力をあげてとりくみます。
(4)福祉保育労大阪地方本部の拡大強化にむけて、「05国民春闘」では3000人の組織づくりをめざします。

【3】「05国民春闘」のとりくみの具体化
(1)賃金、労働条件の改善のとりくみ
(2)憲法と平和・民主主義を守るたたかい
(3)国、地方自治体へのとりくみ
(4)国民共同のたたかい

【4】福祉保育労大阪地方本部「統一要求」
(1) 民間福祉経営への要求
(2)大阪府をはじめとした自治体への要求
(3)政府にむけての要求

【5】福祉保育労大阪地方本部の拡大強化にむけて
(1)職場の民主化と争議の早期解決のとりくみ
(2)大阪地方本部の組織強化のとりくみ
(3)3000人の大阪地方本部づくりをめざして

【6】統一行動への参加と組織化にむけて
(1)全労連・大阪労連の総行動のとりくみ
(2)その他の統一行動のとりくみ

【第1号議案 附属文書】今後の賃金・労働条件改善闘争について(案)

05春闘にあたっての「全労連統一要求書」(案)

2005年国民春闘「大阪地方本部統一要求」(案)





はじめに ― 50年の節目をむかえる“春闘”


(1)欧米の労働組合は、労働者は個人加盟の産業別労働組合に結集し、企業・業界団体や政府等にむけ統一して運動をとりくんでいます。ところが、日本の労働組合は戦後60年間、企業内で労働組合をつくり個々の経営者を相手にした運動が主流となっています。産業別組合(「産別組合」)といっても欧米の「産別組合」とは異なり、個々の企業内組合が産業別に連合するという日本独特のものであり、欧米のように業界団体や政府を相手に労働者の統一した社会的力で運動をとりくむという点では大きな弱点をはらんでいます。

このような日本の労働組合運動のもつ弱点を少しでも克服するために、今から50年前、賃上げ・労働条件改善などの要求実現のために、新年度をむかえる時期に全国統一運動として “春闘”のとりくみがはじまりました。そして、74年の春闘では年金・社会保障拡充を重点課題の一つにかかげ、それ以降、企業を相手に統一して賃上げ・労働条件改善要求をとりくむとともに、年金をはじめとした社会保障制度の拡充や国民的諸要求をかかげる『国民春闘』として運動を発展させてきました。

(2)「05国民春闘」は、“春闘”をとりくみだして50年の節目となります。この50年間、<1>50年代末〜70年代半ばまでの「高度経済成長期」、<2>70年代半ば〜80年代初頭の「低成長(安定)経済期」、<3>80年代初頭〜90年代初頭の「バブル経済とその崩壊」、<4>90年代半ば以降の「“グローバル経済”を下敷きにした産業空洞化による長期の深刻な不況」等、春闘をとりまく情勢と時代は大きく変化してきています。

 とりわけ、今日の小泉「構造改革」がすすめる規制緩和路線は、アメリカ一極集中のグローバル経済のもとで経済・政治・軍事のすべてを無批判にアメリカ政財界に追随し、国際情勢が直接的に国民生活に影響をあたえています。アメリカ軍といっしょになって自衛隊をイラクや世界各国に派兵することを目的にした憲法改悪はその象徴であり、小泉「構造改革」のおおきな特徴点のひとつです。

 国際化した一部大企業の大儲けのいっぽうで、国内ではリストラと産業空洞化が容赦なくすすみ、企業間や産業間、労働者同士の激しい“競争”で、国民諸階層の貧富の格差はますます拡大しています。くわえて社会福祉・社会保障制度の総破壊がすすめられ、国民生活の将来不安は急速にひろがっています。そして、官民を問わず成績主義賃金(個別賃金化)の横行は労働組合の結集力をよわめ、その組織率は年ごとに低くなり労働組合は社会的影響力を弱めています。

今日、国民のなかには不安と不満がまん延し、先行きがほんとうに見えにくくなっています。そのような時代だからこそ、労働組合運動は50年の“春闘”の節目を契機に時代に即応した新しい『国民春闘』を、組合員の創意と工夫を結集して討議と学習を深めあい、組合員の総行動で「05国民春闘」つくり上げていく必要があるのではないでしょうか。


【1】 05春闘をとりまく情勢



(1)小泉内閣の露骨な対米追随路線と、緊急課題となっている憲法改悪反対の運動


<1> 小泉「自・公」連立政府は、泥沼化したイラク戦争への自衛隊派兵延長を国会審議もせずに閣議決定で決めてしまいました。マスコミの各種世論調査では、国民の7割以上は自衛隊派兵延長に反対であり賛成の世論は3割もありません。また、国際的にもイラク派兵撤退の国が続出しており、自衛隊の駐留するサマーワの防衛をするオランダ軍も3月末には撤退を予定しています。1月のイラク国民議会選挙を前にした米軍のファルージャ無差別攻撃は、イラク国民の批判・反発を過激化させ、イラク国民からは「自衛隊は米軍の同調者」という世論が広がっています。この点では、犠牲者がでる前に自衛隊撤兵をすることは急務の課題です。

<2> 露骨な対米追随路線をすすめる小泉内閣は、昨年7月の参議院選挙で公約にかかげた憲法改悪の自民党素案を年末の12月に発表しました。この素案では、<1>天皇を元首とする、<2>集団自衛権を認め自衛隊を軍隊とする、<3>徴兵制を国民の義務とする等を柱としており、これまでの国民主権・平和主義・基本的人権の尊重の3原則を記した現行憲法からは大きくかけ離れています。

素案は読売新聞に発表されると同時に、自民党内すらからも批判がとび出し早速に引き下げました。しかし、自民党の「改憲」の目標がどこにあるのか、この素案は端的にあらわしています。「改憲」勢力の目標は憲法9条を変え、それを基礎に国民の基本的人権の抑制にあることは明白です。

この点で、憲法9条と生存権保障を記した25条をしっかりと結びつけ、憲法改悪反対の世論を広げるとりくみの強化は、早期の重要課題となっています。

<3> 自民党・公明党・民主党の「改憲」論にたいし、現行憲法こそ21世紀にひきつぐ貴重な財産として“憲法を守ろう”と全国民によびかけた『九条の会』の運動は、大阪を出発に全国各地で講演会が開かれ、どこの会場でも満杯の状況となっています。大阪では『九条の会』の呼びかけにこたえ「憲法会議・共同センター」が発足し、府下各地で「憲法を守ろう」の運動がちゃくちゃくと広がっています。

大阪地方本部は昨年末に「憲法改悪に反対」意見ポスターを作成し、福祉関係者のなかに「憲法守ろう」の世論を広げる運動を昨年末からはじめています。堺支部では「住みよい堺市をつくる福祉の会」に結集し、憲法をテーマにした講演会を400人の参加で成功させています。また、河南支部や財団分会関目ブロック等は、地域の「9条を守る会」に積極的に参加し職場でのとりくみの具体化もはじまっています。このような支部、分(班)会のとりくみは、すべての組合員の教訓として広げていく必要があります。

(2)長期不況のもとでも大企業は大儲け、国民の貧富の格差はますます拡大する


<1> 大阪に本社をおく一部上場企業132社の2004年度決算は、経常利益がマイナス(赤字)企業はわずか3社だけで残りの129社はすべて黒字です。この黒字額は、2005年度3月決算期には前年比で平均15.8%も見込まれる状況となっています。ところが、これだけ企業が利益を上げているにもかかわらず、リストラは毎年のように行われ132社は昨年1年間だけで3万1千人、2000年からの4年間で約13万人の正規労働者がリストラされています。

正規労働者のリストラがすすめられる一方で、パート・派遣など非正規労働者は急増しており、すでに非正規労働者は労働者総数の約1/3を占めるまでになっています。このような非正規労働者の急増は、一般産業だけでなく社会福祉法人職場でも同じ傾向にあります。

大阪は沖縄についで全国平均以上に高い失業率にみまわれ、とりわけ若者の就職難は深刻化しています。福祉職場では、若者と女性が急増する非正規労働者の中心をしめ、職場によっては派遣労働も増えはじめています。非正規福祉労働者の急増は、ただでさえ低い福祉労働者の賃金水準をさらに低める役割をはたしており、非正規労働者の“均等待遇”をはじめとする「賃金底上げ」要求運動は「05国民春闘」の重要な課題となっています。

<2> 昨年、トヨタ自動車は1兆円をこえる利益を上げながら、「賃上げゼロ回答」と労働者にたいしきびしい対決姿勢をしめしてきました。トヨタ自動車の社長は日本経団連の会長であり、トヨタ自動車の対決姿勢は日本経団連の日本の労働運動への挑戦以外の何ものでもありません。
今年度、トヨタ自動車は引きつづき昨年以上の収益を上げています。トヨタに象徴されるように自動車、鉄鋼、家電等の産業は、「中国景気」を反映して莫大な収益を上げています。しかし、この莫大な利益は労働者や国民には還元されておらず、リストラの進行とあいまって日本経済の産業空洞化はますます深刻化させています。

小泉「構造改革」がすすめる規制緩和の下で、産業間や企業間の激烈な競争は収益の大きなバラツキ状態を生んでいます。同時に「勝ち組・負け組の競争原理」の徹底は、国民諸階層の所得格差の拡大をますます広げています。

深刻な不況が長期につづく大阪では、高齢者を中心に生活保護世帯が急増しており、所得の格差拡大は地域格差としてもあらわれています。「04人勧」は地域の所得格差を理由に、国家公務員の地域格差是正のための「調整手当」について、平均所得の高い東京圏を引き上げ、関西圏をはじめとした東京圏以外の地域について引き下げの報告をおこなっています。

この点では、“官民一体の春闘”や大阪労連・大阪春闘共闘に結集し大阪府下の賃金水準全体の引上げ運動がいっそう重要な課題となっています。

<3> 政府・財界の「ルールなき資本主義」攻撃にたいし、昨年1年間、労働運動は地道でねばり強い運動で以下のような成果を上げています。<1>2度にわたる「サービス残業適正化」の通知を出させ、全国で年間230億円以上のサービス残業代を企業から出させる、<2>大阪地域最賃を703円から704円に1円引き上げさせる、<3>労基法への解雇自由条項の撤回させる、<4>派遣ヘルパーの非正規労働者としての適正な労働条件確保の通知を労基局から出させる、<5>無念金障害救済法の成立させる、<6>労働争議を迅速な解決をはかるための「労働審判制度」成立、<7>全国各地の生活保護裁判の勝利等々です。

これらの成果は運動によって得たものであり、これからの運動を励まし、おおきな反撃材料のひとつとなるものです。また、大阪では、草野さん・鈴木さん・広瀬さんなど「過労死裁判」闘争が、長年にわたった運動であいついで勝利していることも見過ごすことはできません。

<4> 日本経団連は「05春闘」対策として、昨年12月に経営労働政策委員会報告を出しました。そこでは「企業の国際競争力を強めるため」に、<1>裁量労働制の大幅見直し、<2>ホワイトカラー労働者を労働時間規制の外におく、<3>製造業での派遣労働の期間延長、<4>解雇における「金銭賠償方式」導入など、労働法制のいっそうの規制緩和攻撃を強めています。

ところで、アメリカを頂点とした「グローバル経済化」はヨーロッパ諸国をはじめ世界各国で、大きな国際的な反対世論がわきおこっています。しかし、日本の政府と財界は、アメリカの言いなりになって「グローバル経済化」をおしすすめ、大企業が生き残るために国内の産業空洞化や労働者・国民生活犠牲の反国民的な姿勢をあらわにしています。

この点では、財界・大企業の横暴を法と社会的力で規制し、労働者・国民の生活を守る課題は産業の枠をこえた労働運動の重要な課題であり、労働運動が真に国民世論を結集した「国民春闘」として前進することができるのかどうか大きく問われています。

(3)地方自治と社会福祉制度の総破壊をめざす「三位一体補助金改革」


<1> 小泉「構造改革」の「三位一体補助金改革」は、昨年以上に地方自治と社会福祉制度に大きな影響を与えています。

社会福祉関係では措置費・保育運営費や施設整備費など、これまでの国庫補助金を一般財源化することが当初計画されました。しかし、この計画は福祉関係者のつよい要望や反対の世論の力で、民間保育所の保育運営費・児童施設措置費等については引きつづき国庫補助金として守ることができました。しかし、養護老人ホーム措置費の一般財源化や施設整備費での保育所の「子育て支援対策交付金化」(目的を定めた一般財源化)、「特養ホーム」施設整備費、産休代替職員補助金等については、一般財源化を許す結果となっています。

この国の動きは、各自治体のこれからの福祉施策や、社会福祉法人経営に直接的に影響を与えることとなりす。保育所の「子育て支援対策交付金化」は、必ずしも保育所建設だけに限ったものではなく幼稚園や「認定保育所」も対象となります。また、施設建設にかんして法人負担はいっそう大きくなり、それぞれの社会福祉法人でそれを理由として建設積立金の溜め込みも十分に予測されます。また、自治体財政そのものが減少し、これまでの自治体独自による福祉補助制度のいっそうの見直し・切りつめ攻撃を予測しないわけにはいきません。

「05国民春闘」では、労使間での交渉・懇談をつうじて経営責任を明らかにさせるとともに、国や自治体にむけての労使共同のとりくみを職場段階からつくり上げることがいよいよ重要となっています。

<2> 大阪府をはじめ府下の自治体は、「三位一体補助金改革」とあわせ不況の反映で税収が大きく落ちこみ、自治体財政を悪化させています。ところで府下自治体の財政危機の元凶は、大阪市の3セク事業の破綻が象徴するように、80年代後半期以降のムダな大型開発公共事業によるものです。

財政危機の原因にはまったくふれずに、引きつづきムダな大型開発事業には湯水のように財政をつかい、危機感だけをあおって医療・福祉・教育・中小企業対策など住民生活に直結する予算を削る、大阪府・市をはじめとした自治体の姿勢は許すことはできません。とりわけ大阪府は、知事が先頭にたって「府の負担が大きくなっても関空2期工事を完成させる」と国に陳情をおこない、国土省も200億円もの関空2期工事予算をつけています。

国・自治体の財政危機があたかも補助金制度にあるかのように国民にみせつけ、財政危機の元凶であるムダな大型開発公共事業を聖域化しているのが「三位一体補助金改革」です。この点では、『ムダな大型開発公共事業をやめて福祉・医療・教育・中小企業対策に予算をまわせ』の国民世論づくりを、「05国民春闘」のとりくみの中心柱のひとつに位置づけ運動を強化していく必要があります。

(4)消費税増税と社会保障制度の大改悪


<1> 日本経団連は昨年9月、これからのわが国の社会保障制度のあり方について(「社会保障制度等の一体的改革に向けて」)報告をしています。日本経団連のいう「一体的改革」とは、<1>勤労者家計の社会保険料の負担余力がなくなってきている、<2>企業は国際競争力から更なる人件費コスト低減が求められている、<3>政府財政は莫大な債務のために持続可能性が危惧されている等、3点の前提条件をつくり、今後は「社会保障制度や税制・財政も含めた一体的・総合的な改革によって国民の税・保険料負担増及び、負担転嫁に歯止めをかける」としています。

結論として、日本の社会保障制度は、その中心に「社会保険」をおき医療・介護・雇用・労災などの各種保険の支出抑制をはかり、社会福祉制度については「最大限の自助努力を前提」に「社会保険制度から漏れた人たちに対する補填」と位置づけています。そして、生活保護制度についても「高齢期単身者の保護基準と公的年金制度の整合性の確保」の視点から現行生活保護基準を引き下げ、「公的年金制度確立と各種保険制度の維持」を名目に消費税率大幅引き上げ、私的年金等への支援措置を主張しています。

この日本経団連の主張は、政府の「経済財政諮問会議」や「社会保障の在り方の関する懇談会」の下敷きとなっており、小泉「構造改革」は日本経団連の方針にそって着々とその具体化をすすめています。

<2> 厚労省は昨年10月、社会保障審議会「障害者部会」で突然のように「今後の障害保健施策について(改革のグランドデザイン案)」を提出しました。ここでは、これまでの知的障害・身体障害・精神障害など縦割りとなっている障害福祉行政を一本化し、「地域福祉」を重点にした効率的なサービス支援供給体制を再編するとしています。そして、今国会に「障害保健サービス支援法」(仮称)の上程準備をしています。

ところで、「障害保健・改革のグランドデザイン案」の最大のねらいは、支援サービスの抑制のために障害福祉の根幹をこれまでの「応能負担の原則」から「応益負担の原則」への切りかえにあります。「応益負担の原則」への切りかえは、障害者福祉を介護保険に統合するステップであり障害福祉制度そのものを破壊するもので、福祉保育労大阪地方本部としてけっして容認できるものではありません。同時に、今回の障害者福祉再編は上述の日本経団連報告の流れにそって出されてきたものであり、この点では、社会福祉制度の根幹にかかわる大改悪であることを指摘しないわけにはいきません。

今国会に「障害保健サービス支援法」(仮称)の上程が予定されていることをみたとき、厚労省の用意する法案にたいし、福祉関係者だけでなく国民的な反対運動を大きく組織化していく課題は重要です。

<3> 本来、社会保障制度は第1次配分である賃金・所得(生活費)の格差を、税の再配分によってその格差を少しでも社会的に保障するものです。だからこそ、国民の納税義務についても、近代社会では「応能負担の原則」にそった累進課税が税制の原則として確立してきました。

ところが今日、財界・大企業は「国際競争力」をたてに自らの納税義務(法人所得税や法人事業税)を少しでも下げるために、消費税率の引き上げを声高に主張しています。

消費税は、応能負担の原則からはずれ「応益負担の原則」そのものであり、低所得者ほどその負担は重いものとなってしまいます。小泉「構造改革」は、近代社会が原則としてきた「応能負担の原則」をなげすて、「所得の再配分」である社会保障制度の原則を根本から破壊する方向につきすすんでいます。

 その点で、「05国民春闘」は日本の国のあり方を根本から破壊する政府・財界の攻撃にたいし、労働運動がどうやって国民的に反撃していくのか問われています。福祉保育労大阪地方本部は、職場と日常生活にもとづいた組合員の要求をたいせつにし、大きな視野で21世紀の国の姿・あり方を問う『新たな“国民春闘”』の出発点として「05国民春闘」を位置づけ、組合員が確信をもって参加できる運動づくりをめざします。


【2】 05春闘の要求と重点課題



(1)国・自治体の社会福祉攻撃が強められ、社会福祉法人経営の収入が全般的に縮小するもとでの賃金・労働条件については、賃金「底上げ」、非正規職員の“均等待遇”実現を軸にして賃金・労働条件改善の運動をとりくみます

<1> 国・自治体にむけて社会福祉の公的責任を追及し、社会福祉法人の非営利性と公共性の保障をめざして、財源拡充の運動を住民や経営と共同してとりくんでいきます。また、法人にたいし、賃金「底上げ」と非正規職員の“均等待遇”の実現をめざします。

<2> 大阪労連・大阪春闘共闘に結集し、<1>全労働者の課題である全国一律最低賃金の確立と労基法をはじめとする労働者保護法の拡充整備、<2>社会保障制度や公的教育制度等の拡充による社会的に国民生活を擁護する制度の確立、<3>定率減税廃止や消費税率引き上げなど新たな国民負担に反対などの社会的・国民的な生活擁護の運動を、福祉労働者の賃金・労働条件改善の運動と結びつけてとりくみます。

(2)社会保障制度の総破壊を目的とした『社会保険主義化』や“社会保障充実”を理由とした消費税率引き上げ等、いかなる税負担・「応益負担の強化」に反対します。また、「国民・住民が主人公」の財政切りかえを国・自治体に要求し、社会世論化していきます

<1> 財界や大企業のためのムダな大型開発公共事業や、大企業や銀行への公的資金導入に対し、年金・医療・福祉などの社会保障や教育、中小企業対策など国民・住民の生活に直結する財政切りかえを要求していきます。そのためにも「国民・住民が主人公」の政治の転換を求める運動を幅ひろくとりくんでいきます。

<2> 社会保障の一端をになう福祉労働者として、地域の労働運動や福祉運動・社保協運動に積極的に参加し、地域の福祉要求実現をめざした運動をとりくみます。

<3> 介護保険の見直しによる国民・住民への新たな負担強化や需要抑制に反対し、国民の介護保障確立をめざします。また、障害者福祉を「応能負担」主義から「応益負担」主義に切りかえることを目的にした「障害者サービス支援法」制定には反対の運動に積極的に参加していきます。

<4> 大阪府のすすめる「福祉再構築」施策にたいし、行政責任の放棄を許さないとともに、社会福祉法人の非営利性と公共性のいっそうの強化に役立つことを求めた運動を引きつづきとりくみます。また、大阪市や中核市が大阪府と足並みをそろえて、住民本位の福祉施策を充実するよう運動を強化していきます。

(3)自衛隊のイラクからの早期撤退と、憲法の改悪反対運動は大阪地方本部の総力をあげてとりくみます。

<1> 自衛隊のイラクからの早期撤兵を世論化するとともに、憲法改悪に連動して国会に上程される「教育基本法」改悪に反対し、運動強化をめざします。

<2> 「憲法に反対」意見ポスター5000枚を、職場や職場のある地域に張り出すとともに分(班)会の近在する福祉施設に張り出しの協力要請をおこない、憲法改悪反対の世論を福祉分野でも広げていきます。「05国民春闘」の時期に、「憲法改悪反対」署名の10万人筆の早期達成をめざします。

<3>経営・職員・利用者など、職場のすべての関係者で「9条の会」「憲法改悪に反対する会」を組織するとともに、府下の福祉関係者で「憲法改悪反対」連絡会(仮称)結成を呼びかけていきます。分(班)会は職場で組織した「9条の会」「憲法改悪に反対する会」を地域の「憲法会議・共同センター」に結びつけ、地域的な憲法改悪反対の世論づくりを先頭にたってとりくみます。

(4)福祉保育労大阪地方本部の拡大強化にむけて、「05国民春闘」では3000人の組織づくりをめざします。

<1> 急増する非正規職員を組織化し、正規職員中心の分(班)会からすべての職員を組合員対象として、職場の過半数を組織した「法内組合」をめざします。パート・非常勤職員など非正規職員の組合員加入促進をめざして、「05国民春闘」時期に地方本部に『パート・非常勤』部会をたちあげていきます。また、非正規職員の組織化にむけて、非正規職員の要求を積極的に組織し、「05国民春闘」での職場の重点要求にしていきます。

<2> 支部が中心となって、未組織の社会福祉法人職場の組織化推進計画を「05国民春闘」時期に作成し、新年度の職員の採用時期に重点的に組織化していきます。4月から行動できるように準備をいそぎ、4月〜6月を「組織拡大月間」としていきます。

<3> 勤労協の協力を得た「組合活動講座」実行委員会の立ち上げをいそぎ、学習活動強化をめざします。また、「大阪社会福祉研究交流集会」の準備をはじめ、組合員や職員の仕事の悩みや要求を中心にした研究交流集会を成功させていきます。


【3】「05国民春闘」のとりくみの具体化



(1)賃金、労働条件の改善のとりくみ


<1> すべての職場で地本統一要求書を提出し、団体交渉をおこなっていきます。その際、賃金実態の開示を求めるとともに、収入の中での人件費比率の協議をおこなっていきます。

<2> 賃金体系の見直しにあたっては、「能力給」や「成績給」の導入、人事考課の導入に反対します。賃金体系は原則として福祉職俸給表1級から5級を使った「通し号俸」賃金体系を要求していきます。

<3> 短大卒初任給は、福祉職俸給表1級4号・163,100円を要求していきます。手当として、調整手当10%、通勤手当、扶養手当、住宅手当の支給を求めます。非常勤・パート職員の日給は7,500円、時給は1,070円を要求し、その実現をめざします。

<4> パート・非常勤職員など非正規職員の賃金、一時金、退職共済会加入、社会保険加入など、正規職員との「均等待遇」を計画的に実施していくことを要求します。そのための財源保障を自治体に要求していきます。春闘時期に「パート・非常勤部会」を立ち上げていきます。

<5> 職場にタイムタード設置を要求し、36協定の締結や労働協約締結を徹底していきます。残業手当は、労働基準法に基づき、刻印どおり支給することを要求します。

<6> 「常勤換算」方式の導入により正規職員の非正規職員への置き換えに反対します。パート・非常勤職員など非正規職員への正当な理由のない「雇止め」に反対します。

<7> 50人以下の職場でも「労働安全委員」を配置し、「大阪健康安全センター」の開講する『労働安全セミナー』への委員の職務免除の参加と有償保障を要求します。とりわけメンタルヘルス問題では、労使で認識を一致させ、その原因を解明し、改善をはかります。

<8> 福祉業界、同友会などにたいして、賃金や労働条件、福祉の情勢についての懇談を申し入れていきます。

<9> “全国統一のたたかう春闘”として位置づけてとりくまれる「全労連統一要求書」運動を積極的にうけとめ、全分会で「全労連統一要求書」提出し経営に誠実な回答を求めていきます。

(2)憲法と平和・民主主義を守るたたかい


<1> 「9条・25条の会」担当者を決め、憲法の学習会、宣伝行動を定期的にとりくみます。学習会や地域宣伝の感想、各団体の様子を載せたニュースなどを発行していきます。

<2> 経営者や保護者、利用者と共同し、職場「9条・25条の会」を立ち上げ、アピールを発表していきます。地域の「九条の会」にも結集していきます。

<3> イラクからの自衛隊撤退、アメリカ、イギリス軍によるイラク国民の虐殺に反対する集会等に積極的に参加していきます。

<4> 府民過半数を目標にとりくまれている署名は、一人50筆目標でとりくみます。05年9月には目標を達成していきます。大阪地方本部に署名推進体制を確立していきます。

<5> 3月20日(予定)の国際的統一行動には、大阪地方本部として500人の参加をめざします。

(3)国、地方自治体へのとりくみ


<1> 大阪府にむけた署名を引き続きとりくみ、ひとり50筆の目標をめざします。2月初旬に府議会に提出していきます。05年度大阪府予算にむけて、補助金の増額、職員増を要求して府庁前宣伝を行なっていきます。
<2> 財源の一般財源化を理由とした産休・病休代替制度の改悪をおこなわないよう、自治体がこれまでどおり制度を維持するよう労使で要請書を提出していきます。

<3> 堺市、高槻市、東大阪市には大阪府同様の補助金制度の創設を要求していきます。大阪市については保育所、措置費施設は引き続き、公私間格差是正制度の存続を求め、高齢者施設、支援費施設では大阪府と同様の補助制度を創設することを要求します。

<4> 府立病院の「独立行政法人化」、「指定管理者制度」の学習を強め、関係団体との運動をおこなっていきます。コロニー事業団の民営化や大阪市による市社協のリストラ、合理化策に反対していきます。

<5> 府民連がとりくむ署名は、組合員・家族の分を目標にして、2月初旬までとりくみます。

<6> 「税金で運営している職場は、低所得者を生み出さない」など、公契約における公正賃金の確保をめざし、他団体ともに運動広げ、その実現をめざします。その運動と連動し、福祉分野での最低賃金要求の確立をめざします。

<7> 厚生労働省労働基準局が出した「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」の通達を履行するためにも、介護報酬の増額を政府に求めていきます。

<8> 応益負担を導入する「障害者福祉改革のグランドデザイン」に反対し、中央本部や障害者団体、同友会など関係団体とともに共同行動をとりくみます。また、地方自治体への意見書採択運動をとりくみます。

(4)国民共同のたたかい


<1> 福祉分野における公的責任の放棄、利用者負担の強要、労働者の専門性に否定につながる制度改悪に断固反対し、地域や各団体、経営と共同し、自治体や府民に向けて内容を明らかにし、共同運動を展開していきます。また大阪地方本部として最大限のとりくみをおこなっていきます。

<2> 地方独立行政法人化、指定管理者制度、市場化テストなどを使った保育、病院福祉施設などの民営化や企業参入に反対し、住民のくらし、いのちと地方自治を守るとりくみを関係団体とともにおこなっていきます。

<3> 消費税増税、定率減税廃止反対の運動を大阪労連に結集し、国民とともにすすめていきます。


【4】福祉保育労大阪地方本部「統一要求」


(1) 民間福祉経営への要求


【賃金等の要求】

<1> 賃金体系の見直しにあたっては、「能力給」や「成績給」の導入、人事考課の導入に反対します。賃金体系は原則として福祉職俸給表1級から5級を使った「通し号俸」賃金体系を要求していきます。短大卒初任給は、福祉職俸給表1級4号、163,100円を要求し、日給7,500円、時給1,070円を要求します。手当として、調整手当10%、通勤手当、扶養手当、住宅手当の支給を求めます。

<2> パート・非常勤職員など非正規職員の賃金、一時金、退職共済会加入、社会保険加入など、正規職員との「均等待遇」を計画的に実施していくことを要求します。

<3> 5年前に遡り財務諸表の開示を原則に法人の将来見通しを明らかにし、職員の労働諸条件の改善と事業見通しについての協議と合意をもとに実施することを求めます。

<4> 賃金の見直しによって「現給」引き下げのおきる職員については、激変緩和の暫定措置をとることを要求します。また、これまでの公務員職員を基礎とした中途採用者の前歴換算を是正し、中途採用者の同年齢者との賃金格差の解消を要求します。

【労働時間短縮・職員増員等の要求】

<1> 経営にたいし、1週「実労35時間(1日・7時間)」と週休完全2日制の実現への努力を求めます。また、宿直・夜勤は1週1回以内とし、宿直(夜勤)明けの保障を求めます。

<2> タイムカードを設置し、通達にもとづく「使用者の労働時間掌握の義務」を守ることを要求します。時間外手当や夜勤手当などの割増賃金は、タイムカードの刻印時間通りに支給することを要求します。また、宿直手当は厚労省通知を遵守し、手当は1回あたり職員の平均賃金の時間単価1/3以上の支給を要求します。

<3> 「常勤換算」方式の導入により正規職員の非正規職員への置き換えに反対します。パート・非常勤職員など非正規職員への正当な理由のない「雇止め」に反対します。正規職員の欠員が生じた場合は、公募を原則としながらも在籍した非正規職員からの優先的な雇用の保障を求めます。

<4> 経営の努力で、最大限の正規職員の増員を求めるとともに、現行の「職員配置基準」について、当面、現行の最低基準の1.5倍化を業界世論となるように業界や行政に経営として働きかけることを要求します。また、長時間(夜間)保育加算、障害児保育加算、重度障害児加算、「虐待児対策」加算など、困難ケースや業務改善のための職員増員と正規職員配置をめざして業界や行政に働きかけることを求めます。

【その他の要求】

<1> 職員会議をもとにした民主的な職場運営と、職員の権限と責任を明確にした業務の指示系統を確立することを求めます。バザーや募金活動などの自主活動は、職員の自主性を尊重してノルマを課したり、強要しないことを求めます。ましてや、職員の業務成績評価にすることには反対します。

<2> 経営として職員の健康管理に責任をもち、最低年1回の「職業病」特別検診を含む健康診断の実施を求めます。職員50人以上の職場では、法律にもとづいて「労働安全委員会」の設置を求めます。また、設置義務のない職場においても極力「労働安全委員」を配置し、「大阪健康安全センター」の開講する『労働安全セミナー』への委員の職務免除の参加と有償保障を要求します。

【職場での統一要求最低基準】

<1>「均等待遇の原則」にもとづき、パート・非常勤職員など非正規職員の賃金を時給に換算して50円以上引き上げること。

<2> 週休完全2日制と「実労1日7時間(拘束8時間)」、年間1,800時間労働を実現すること。1ヶ月を超える「変形労働時間制」は導入しないこと。

<3> 6ヶ月以上勤務者の年次有給休暇を一律20日間、民法上保障されている余った年次有給休暇の「1年間の持越し」をおこなうこと。

<4> 夏季・冬季の特別休暇を日・祭日をのぞき、各々6日保障すること。年末29日〜年始3日の勤務者にたいし、「特別手当」を支給すること。

<5> 産前産後休暇を有給で18週間、多胎出産の場合は22週間以上を保障すること。また、生理休暇を有給で1潮2日保障すること。

<6> 生活施設での宿直・夜勤を1週1回以内、拘束12時間以内とすること。

<7> 「メンタルヘルス」の強化と、「メンタルヘルス」疾病者への休業制度やリハビリ勤務制度の創設・改善をおこなうとともに、リフレッシュ休暇の創設と拡充をおこなうこと。

(2)大阪府をはじめとした自治体への要求


<1> 大阪府をはじめ大阪市、堺市、高槻市、東大阪市にたいし、社会福祉法にもとづく「福祉職員人材確保対策」による自治体独自の「職員配置基準」の策定を要求していきます。

<2> 自治体財政の危機を口実としたこれまでの「福祉」補助金の縮小・削減に反対し、福祉現場の実情にあった補助金の拡充を要求していきます。

<3> 大型開発のムダな公共事業を中止し、福祉・医療・教育・中小企業対策の強化を要求していきます。

(3)政府にむけての要求


<1> イラクからの自衛隊撤退を要求するとともに、日本国政府が日本国憲法と「国連中心のイラク復興支援」の立場にたってイラク支援をおこなうことを要求します。

<2> 社会保障制度の破壊、消費税率の引き上げをはじめとした増税など国民生活に犠牲を強いる悪政に反対し、国民生活擁護の政治を求めていきます。

<3> 2005年度の「介護保険見直し」に連動する社会福祉制度の再度の大改悪に反対します。「障害者福祉改革のグランドデザイン」の導入、民間保育所の一般財源化、地方分権にともなう補助金・交付税削減に反対し、地域・各団体・経営者との共同を展開していきます。

<4> 教育基本法改悪や、憲法9条を変えるような憲法改悪と、そのための「国民投票法案」審議に反対します。


【5】福祉保育労大阪地方本部の拡大強化にむけて



(1)職場の民主化と争議の早期解決のとりくみ


<1>「聖家族の家」田中さん争議解決と職場の民主化、「聖家族の家」分会の再建に取り組みます。

<2> 一方的な協約破棄をおこなったコロニー事業団や市社協の補助金削減にたいしては、対策会議を引き続き行ない、運動を強めていきます。

(2)大阪地方本部の組織強化のとりくみ


<1> 月1回の分会・班会議をおこなっていくとともに、必要に応じて役員会議を開催していきます。春闘議案を読みあわせし、意思統一をはかっていきます。

<2> すべての組合員の参加する春闘体制をつくるために、地本執行委員会を軸に支部・分(班)会の執行体制の強化と日常的な学習と討議を深めていきます。

<3> 種別協議会を軸に福祉をとりまく情勢の学習と討議にとりくみ、情勢負けをしない福祉政策の検討・研究をとりくみ「展望づくり」をめざします。

(3)3000人の大阪地方本部づくりをめざして


<1> 4月から6月までの2ヶ月間を「組織拡大月間」として、新入職員の組合加入をおこなっていきます。増え続ける非常勤・パート職員の組織化をおこない、組織化100%をめざします。また、職場にいる登録ヘルパーも組織していきます。

<2> 組織拡大計画は支部を単位に計画をつくり、そのためにも支部体制の確立と支部の日常活動を強化していきます。1分会2未組織職場への訪問を計画していきます。すべての分(班)会は支部に結集し、法人への要求提出をはじめ職場での春闘のとりくみをすすめます。

<3> すべての分(班)会、支部が地域労連・大阪労連「地区協」に参加し、地域から05春闘のとりくみと地域の労働運動の活性化を強めていきます。


【6】統一行動への参加と組織化にむけて



(1)全労連・大阪労連の総行動のとりくみ


<1>「2.23全国地域総行動」には、目に見える春闘として位置づけ、地域での街頭宣伝や地域労連が計画する行動に積極的に参加していきます。

<2> 3.9大阪パート1,000人デモには、パート・非常勤職員の均等待遇を学習しながら、パート非常勤職員の組合員を中心に参加していきます。

<3> 消費税の「財政問題」、定率減税廃止など政府・財界の狙いを学習しながら、「3.11重税反対全国統一行動」に参加し、運動の前進をめざします。

<4> 3.17春闘大阪総行動は、分(班)会を中心にして1割を目標に参加者の組織化をめざします。また、地域労連の種々のとりくみに積極的に参加します。

<5> 5月1日メーデーは市内分会を中心に大阪中央メーデーに多数の参加者の組織化と、府下の地域メーデーには当該の分(班)会、支部でとりくみを強化していきます。

(2)その他の統一行動のとりくみ


<1> 一連の春闘総行動に積極的に参加できるように職場単位の学習と討議をふかめ、“国民総ぐるみ”春闘を職場と地域からつくりあげていきます。

<2> 府的な行動や中央行動、地域での諸行動では、福祉拡充要求や職場の具体的な要求をもって参加し、府民の福祉水準の向上と福祉労働者の労働条件改善の世論づくりの場としていきます。

<3> すべての分(班)会は、2月末までに「地方本部統一要求」提出し、3月16日を集中回答日に設定していきます。

<4> 大阪地方本部として、「05国民春闘」の期間中に傘下分(班)会の経営者・管理者との懇談を申入れ、「一致する課題での共同」を呼びかけていきます。




【第1号議案 附属文書】



今後の賃金・労働条件改善闘争について(案)


I、経営をめぐる状況と組合のとりくみの現状

<1> 府「公私間格差是正」制度廃止にともなう「再構築」補助金の枠ぐみや単価は、おおむね来年1月中旬には経営に概要が明らかにされる予定です。大阪市や中核都市のそれぞれは、現段階では大阪府のうちだす方向性と同一歩調をとるのかどうか、必ずしも明確にはなっていません。堺市のように、これまでの補助制度全般を見直すような動きもでており、自治体への運動は引きつづき重要となっています。

大阪市や中核市の動向は、大阪府と同じように1月中下旬〜2月上旬には、非公式ではあっても各経営に概要が明らかにされるものと思います。この点では、該当する支部や分会は、自治体交渉のとりくみをいっそう強化し、情報を入手するとともに働く職員と経営体にとって少しでも有利な条件をたたかいとることが重要となっています。

<2> 大阪府や大阪市、中核市の社会福祉法人にたいする補助制度のあり方は、国のすすめる「三位一体改革」、「社会保障制度の一体的改革」「今後の障害保健福祉施策(グランドデザイン)」等との関係や自治体をめぐる財政状況により、大阪府の「再構築」補助金そのものも引きつづき流動的な要素をもっています。

この点では、大阪府の「再構築」補助制度が明らかになったとしても「当面(05年から数年)の施策」としてみておく必要があり、職場での賃金・労働条件問題のとりくみは「05春闘」だけで終わるのではなく、「春闘」や国・自治体への運動を毎年のようにとりくむことが重要となっています。

今日、国のすすめる「三位一体改革」や「社会保障制度のあり方検討」等のうごきは、税制問題や地方自治制度の根幹にかかわるものであり社会福祉法人の経営にも直接的に影響します。すでに、社会保障審議会が「社会福祉事業及び社会福祉法人について」や「今後の障害保健福祉施策について」の検討をはじめていますが、これらのうごきは消費税率の引き上げと連動しています。そして、消費税率の引き上げが検討されている07年度は、おおきな一つの区切りとなる年度となります。

この点では、当面する賃金・労働条件問題についても05〜10年代にかけ福祉制度が流動化するという、中長期の視野にたって今日的な課題と運動をとりくむ必要があります。

<3> 今日的時点では、各法人の来年度以降の収入財源見通しは、いたって不確定な状態にあります。このような下で、各法人は「収入減にはなっても収入増はあり得ない」ことを前提に「将来の賃金(体系)」づくりが始まっています。

今日、確実に言えることは「来年度以降の収入見通しが不確定」だということです。この点で、収入見通しの不確定な段階での賃金体系や人件費支出について労使間で拙速な賃金「確定」作業や「確定のための交渉」は、労使関係の必要以上の混乱が予測されます。このような混乱は、職場の組合活動をすすめる上で少しでもさける必要があります。大阪地方本部は、来年度の法人の財政見通しが明らかになり、労使で法人財政について共通認識がもてる条件をねばり強く追求し、このような条件の下で職場・法人での賃金(体系)確定のとりくみをすすめていくことを方針とします。


II、財源確保と福祉労働者の賃金・労働条件向上の運動について

<1> この間、福祉保育労大阪地方本部は、公的福祉制度が充実されてこそ社会福祉法人や無認可事業にはたらく職員の労働諸条件も保障され、住民の福祉サービスや非営利の社会福祉法人経営も守られるという立場で運動をとりくんできました。政府が福祉制度の根幹の破壊や地方自治危機をつくりだしている今日、政府の「福祉市場化」路線や自治体の補助制度削減や縮小に反対し、引きつづき公的福祉制度の充実を重点課題としてとりくんでいきます。

 公的福祉制度の充実は「住民が主人公のまちづくり」の課題の一つでもあり、住民の中にある切実な福祉要求実現の運動なしには実現することはできません。この点では、福祉サービスと福祉職場の労働諸条件の実態を住民につたえ、地域住民の切実な福祉要求実現の運動と結びついた運動の展開が重要となっています。また、社会福祉法人の非営利性をまもり経営の発展をねがう経営者との労使共同のとりくみもいっそう重要視していく必要があります。

 公的福祉制度の「再構築」にむけて制度のあり方と運動のとりくみについては、労使間をはじめ関係者との意見交換や組織内での検討を深めあっていきます。

<2> 73年からの大阪府・市「公私間格差是正」補助制度は、府下民間福祉労働者の社会的平均的賃金の水準として機能し、少なくとも組合のある職場では「公私間格差是正」という概念も一般化してきました。しかし、今日、財界や政府・自治体当局からきびしい公務員攻撃がすすむ下で、「公私間格差是正」の概念は公務員の賃金を民間労働者の賃金と比較し公務員賃金の引下げの材料・概念として使われてきています。公立直営施設の「独立行政法人化」や「指定管理者制度」・「公立保育所の民営化」などの攻撃は、「民間にくらべ公務員賃金が高くコスト高となっている」ことを最大の攻撃材料にしてすすめられています。

このように情勢がおおきく変化している今日、「公私間格差是正」という概念は公務員攻撃の一つとして機能しはじめています。また、これまで社会福祉法人にはたらく福祉労働者を「民間福祉労働者」としてきましたが、「民間福祉労働者」という概念についても十分な吟味が必要です。世間一般にいう「民間」は官立・公立にたしする民間営利企業を意味します。    

これまで社会福祉の分野は公共性の高い事業として位置づけられ、自治体あるいは非営利の社会福祉法人の事業として強い規制がありました。しかし、小泉構造改革の「規制緩和」は効率性を最大目標にして、社会福祉分野にも民間企業の参入拡大を積極的に押しすすめています。今日では、私たちがどのように思おうと営利を目的にした「福祉労働」や「福祉労働者」が存在しはじめています。この点では、これまでの公務員にたいし社会福祉法人や無認可・共同保育所(障害者作業所)にはたらく福祉従事者を意味してきた「民間福祉労働者」も、「非営利の無認可や社会福祉法人にはたらく職員」と自らを正確に規定づける必要があります。

<3> 無認可や社会福祉法人にはたらく職員の賃金・労働諸条件は、社会的平均的にみてもきわめて低い状態にあります。このような劣悪・低賃金状態は、わが国の労働者全体のなかに存在する男女間差別賃金(男性100に対し女性60弱)や小零細規模労働者の差別賃金(大企業100に対し小零細約70)等、日本の賃金問題を色濃く反映しています。

その点で、無認可・社会福祉法人にはたらく福祉労働者の賃金闘争は、全労働者的な「賃金底上げ運動」や「全国最低賃金引き上げ運動」に連動するとりくみがどうしても必要となります。あわせて、社会福祉の公的拡充と福祉労働者の賃金引き上げや労働条件改善が表裏関係にあり、社会福祉への公的財源投入を実現させるためには住民合意を得ていく運動が重要となります。福祉労働者の賃金財源が税金であれ保険料であれ公的なものであるだけに、福祉労働者全体の賃金・労働条件のあり方を科学的に明らかにし、住民福祉を実現するためにどれだけのコストを必要とするのか、住民への説得力が決定的に重要となります。

<4> 福祉労働者の賃金・労働条件を考えていく場合、一般(単純)労働者との賃金対比だけでなく「専門労働者」としての賃金についても検討が必要です。そして、福祉労働の従事者を「専門労働者である」といった場合、仕事内容にかかわる「専門性」と職業としての「専門職」の関連と区分を明確にする必要があります。今日の福祉労働者をとりまく状況をみた場合、仕事内容にかかわって専門性が問われる割には「専門職」としての身分は確立していません。教育職にある「教諭」や医療職にある「看護師」などと比べ、社会福祉労働はそれらと同じように公共性の高い対人サービス労働ですが「教諭」や「看護師」のような「ライセンセンス」制度は確立していません。「教諭」や「看護師」のライセンスは「業務独占」であり、無資格者が従事すれば事業者と従事した無資格者は法で罰せられます。

 しかし、社会福祉の「社会福祉士」「介護福祉士」「保育士」など国家ライセンセンスは単なる「名称独占」であり、無資格者だからといって法で罰せられるものでもなく、ましてや社会的地位や身分保障には直結していません。この点では、今後、福祉労働者の社会的身分を確立させ賃金・労働条件の抜本改善をすすめていくためには、どうしても賃金・身分保障と結びついたライセンス問題を解明し、国民から支持・納得される問題提起が必要となっています。

<5> 73年からはじまった「公私間格差是正」制度は、58〜60年の大阪府・市にむけた「生活補給金闘争」が出発点となります。この「生活補給金闘争」は「民間福祉労働者に年末のモチ代を支給せよ」と大阪市役所や府庁に“座り込み”の直接行動をおこない、その結果、当時で年間3,000円の「生活補給金」をはじめて支給させることができました。その後、「生活補給金」は、「公私間格差是正」制度発足の直前には年間12,000円〜32,000円の「研修費」と名称もかわり引き上げさせる運動を営々ととりくんできました。

「公私間格差是正」補助金制度は15年間の運動の上にたって、当時の全国的な革新自治体づくりの運動と結びついて、社会福祉法人にはたらく福祉労働者の賃金問題に本格的にメスをいれ成果として実りました。今日、規制緩和・「福祉市場化」路線の逆風のもとで、32年間つづいた「公私間格差是正」補助金制度は根本から破壊されようとしています。しかし、「公私間格差是正」補助金制度の破壊にむけて2000年度からの「激変緩和の暫定措置」の5年間、2005年度の新たな「再構築」制度の改悪をみこした私たちの運動はすでに始まっています。2005年度に新たな「再構築」制度がどのような姿で登場しようと、「府民福祉の向上」「福祉従事者の身分保障」「非営利の社会福祉法人の経営安定」の3本柱は引きつづきの運動課題です。そして、この3本柱の課題は自治体だけでなく、国の福祉制度のあり方を問う課題でもあり、国や自治体の政治をかえる課題と結びついてきたことを教訓化し、引きつづきの運動をとりくんでいく必要があります。


III、当面、労使間で賃金(体系)問題に関し、協議し確認すべき事項について

(1)現行の賃金実態を正確につかみましょう

<1> 現行の人件費を正確につかむために、正規職員、非正規職員、管理監督者のそれぞれの平均年齢、平均勤続年数、平均月額本俸、平均年収、各種手当等々の正確な数字を経営に明らかにさせ、分会としてこれらを把握していきます。

<2> 経営に対し、2000年〜2004年度の毎年、総収入の中で人件費のしめる割合 (人件費比率)を公開させ、上記の正規職員、非正規職員、管理監督者のそれぞれの人件費を対比し、正確に把握していきます。また、賃金については、名称・手当のいかんを問わず、「年間総収入」として正確に把握することを重視していきます。

<3> 同一賃金体系下(事務職員・直接処遇職員等)にある一般正規職員と、同様の非正規職員の構成比率と人件費比率の対比を正確に掌握し、「均等待遇」を検討する場合の実態を事前に把握していきます。

<4> 経営に対し、一般正規職員の中での事務職員・直接処遇職員、調理員、看護婦等、職種ごとの平均年間本俸・平均年間「期末勤勉手当」・平均年間「その他の手当」を公開させ、分会として把握していきます。

(2)管理監督者の手当も協議の対象とする

<1> 管理監督者の範囲を明確にさせ、管理監督者は非組合員に位置づけます。管理監督者とは、労働組合法第2条1項に規定する「監督的地位にある労働者」をいい、通常、就業規則では「管理監督者」として明記されています。

大阪地方本部は管理監督者の組合加入を認めないからといって、反対に、組合員を理由にした職員の管理監督者の登用拒否など、不当労働行為は断じて認めません。大阪地方本部としての管理監督者の位置づけは、次代の法人経営を担う経営陣を組合内からも積極的に輩出させ「経営の民主化」をめざします。

<2> 管理監督者の登用にあたっては、公平・公正、透明性を確保することが重要となります。小零細規模の経営体では難しい課題となりますが、この課題について労使間で十分に協議し、管理監督者登用にあたり公平・公正、透明性の確保を経営に要求していきます。この点では、登用試験の検討も一考に価します。

<3> 管理監督者の「管理職手当」と中間職制への「職務手当」を、混同しないようにしていきます。「職務手当」は労働力の対価の一つであり、「職務手当」受領者は超勤手当支給の対象とすます。

<4> 「管理職手当」を“褒賞”と位置づけるのではなく、「経営・管理責任」労働力の再生産費として位置づけていきます。また、「管理職手当」は、定率あるいは定額はともかくとして、「通し号俸」の賃金体系を原則に「労使間で合意の得られる範囲の金額」の上積みを認めていきます。

(3)労使間で、収入総額の中での人件費比率の検討を協議していきます

<1> 措置費では、保育所でみた場合おおむね事業費10%、管理費5〜8%、人件費約83%が積算されていました。しかし、規制緩和や福祉市場化路線の下では、この基準は積算基準としてみることはできても、総収入のなかでの人件費比率としては通用しなくなってきていています。これは措置費の弾力運用の幅がひろがり、施設を建替える場合の積立金(再生産費)を認められることからおきています。このような状況の下で、大阪地方本部では、「再生産にかかる自己資金1/4までを認める」という踏み込んだ方針を、「福保労大阪地方本部04国民春闘方針」のなかですでに出してきました。

加えて、いま論議になっている「三位一体改革」による施設整備費が仮になくなった場合は、施設建替えに要する費用全体(再生産費)を経営は管理費の中に組みこんでくることが予測され、そうなれば総支出の中にしめる人件費の比率はいっそう下がったものとなります。この点では、「三位一体改革」の流れのなかで、労使間で積立金問題をどのように位置づけるのか、いっそう重要な課題となってきます。

大阪地方本部は、「再生産費」問題を「職場の存続」と「雇用の確保」という観点で位置づけ、経営が「裁量権」として一方的に決めていくことに反対し、労使協議の対象としていきます。

<2> 2000年から発足した介護報酬は、それまで措置費には積算されていなかった「再生産費」を積算しているとされています。介護保険発足の当初では、大阪府の試算では入所率を年平均95%として想定した場合、総収入のおおむね50〜60%を人件費としてみていました。たしかに特養ホームでは介護報酬が引下げられた03年度においても、措置費時代の総収入よりも介護報酬が上まわっています。これは原価償却費との関連で、「建設積立金」等の費用が積算されているとみていいと思います。

 支援費について厚労省は、原則として「措置費」時代を下まわらないように積算するとしており、たしかに「措置費」時代と比較した場合よりも支援費の総収入は増えています。しかし、これは人件費単価の積算を引上げたのではなく介護報酬と同じように管理費部分の積算を引きあげた結果によるものです。

 介護報酬と支援費に共通していえることは、積算基準とりわけ人件費積算が従来の措置費のように人事院勧告と連動しておらず、人件費積算そのものが不明となっていることです。そして、総体として総収入の中でしめる管理費が増額されており、その分人件費比率が下がっていることです。

 以上の点で、国の積算基準だけでみれば、社会福祉法人の人件費比率は約50〜80%とみることができます。しかし、大阪の場合は国基準に加えて大阪府をはじめ各自治体の補助金が加わる点で、予算総収入のなかでの人件費比率をどこにおくか、必ずしも定式はありません。また、医療分野や私立学校などのように、これまでの長い歴史をもち経験法則的に経営上の人件費率ラインをもっているのにたいし、社会福祉法人経営の場合はこのような経験法則の積上げがないだけに、総収入にしめる人件費比率をどこにおくかは今後にむけての検討が重要になっています。

<3> 以上の点で、社会福祉法人経営をみたとき、国基準、自治体補助、法人独自の努力(寄付金、利用者負担金等)の総収入の中での比率を明らかにし、それとの対比で人件費比率、再生産費、日常管理費、事業費の配分比率の検討が必要となります。

そして、これらの要素は、法人の規模や業種、これまでの法人のあゆみと条件等々、個別的要素を強くもっており一律に論ずることもできないことを、しっかりと押さえておく必要があります。

<4> 人件費を考える場合、非正規職員の配置比率と人件費比率等についての検討も重要な課題です。大阪地方本部は、これまで非正規職員の「均等待遇」を方針化しているだけに、非正規職員の位置づけや非正規職員の要求そのものにも十分に耳をかたむけ、賃金闘争に反映させる必要があります。

 非正規職員の「均等待遇」は、賃金にかんするだけの問題ではありません。年金や健康保険・雇用保険の加入、退職金共済への加入など、正規労働者のもっている社会諸制度への加入をはじめ、本人の希望と経営の雇用条件があえば正規職員採用への道すじについても検討が必要です。賃金にかんしていえば、正規職員の平均「時間賃金」の同等水準が非正規職員の平均「時間賃金」となることを目標にしていきます。また、一時金についても、原則は正規職員並に平均「時間賃金」を基準にして財源化を求めていく必要があります。その他、年次有給休暇やその他の有給休暇についても、正規職員のもつ同等水準を目標にしていきます。

 労基法上、有期雇用は3年まで認められていますが、原則的には有期雇用の非正規職員が、正規職員と同じような仕事内容で長期間にわたり雇用されるのは好ましいことではありません。しかし、法人の財政事情や、本人の希望により非正規雇用であっても働きつづける意思のある場合は、経営の一方的な「雇止め」には反対します。

(4)賃金体系は、だれにもわかる単純明快な体系がのぞましい。

<1> 大阪地方本部は、この間、事あるごとに賃金体系の見直しにかんして、成績評価や人事考課の導入による賃金体系は認めない方針を打ちだしてきました。「成績給」賃金体系には、おおきく2つの問題点があります。その第1は、利用者住民への福祉サービスは個々の労働者の労働が集団として絡み合ってこそ、有効なサービスとして発揮される点です。集団としての労働力が発揮されてこそ、福祉労働の有効性がいちだんと増すことを考えたとき、福祉労働を個別に評価することは集団労働そのものを破壊し、住民や利用者の福祉サービスに有害なものとなってしまいます。

第2に、かりに成績評価をするとしていったい何を基準に評価するのか、誰が評価するのか等々、評価の客観性や科学性などまったく存在しません。客観性や科学性ない基準をもとに評価するということは、使用者にとって都合のよい労働者づくりや労務管理を目的にしたもの以外の何ものでもありません。

この点で、あらためて成績給や人事考課の導入は、福祉職場が福祉職場でなくなり、福祉労働が福祉労働でなくなることになり断じて認めることはできないことを強調する必要があります。

<2> 行の公私間格差是正「標準給与表」は、公務員の行政職1表をもとにした「職階職務給」の体系で、必ずしも全面的に支持できるものではありませんでした。

今回、公私間格差是正制度がなくなることから、職場の賃金体系の全面的見直しが始まろうとしていますが、大阪地方本部は、職場での賃金体系について、主たる賃金(本俸・本給)は職場の誰がみてもわかりやすい単純明快であることを方針としています。この条件にかなう賃金体系は、「通し号俸」級で構成され、勤続(経験)年数や職務は号俸への格付の際に検討するものとします。大阪地方本部としての「通し号俸」賃金表については、別途、賃金検討委員会で検討作成していきます。

<2> 諸手当にかんする取扱いですが、従来の調整手当は原則として本給に繰入れさせる必要があります。調整手当を本給に繰入れることにより、退職金や年金に反映することを十分に討議していく必要があります。

当面、手当として支給することが適当と考えられるものは、交通費・通勤手当(実費弁済)、扶養手当、住宅手当、中間職制のための各種の職務手当等とします。

<3> 期末勤勉手当は“賞与”や“褒賞”ではなく、賃金の“後払い”として正しく位置づける必要があります。また、当面の流動化する情勢の下で経営の見通しが定かでない状況がつづくであろうことを予測したとき、賃金の月額現給保障とあわせて、年間の給与所得水準と月額賃金現給保障の「弾力性」を期末勤勉手当として支給させるという位置づけが必要です。

 その意味では、「期末勤勉手当」を固定化したり人事院勧告にしばるのではなく、経営に対し経営実態を正確に公表させ、労使協議を前提に「一時金」として年2回(夏季・冬季)に支給させていきます。

(5)賃金に関する当面の労使協議について

<1> 今日時点では、経営の来年度予算の収入見通しについて憶測はできても、具体的な金額の共通認識の上にたって交渉できる条件は経営にも組合にもありません。その点では、1月中旬以降、大阪府や各自治体などの補助要綱(概要)が把握でき、収入見通しが確定するまでは、賃金体系の確定についてもいそがないことが重要です。

このようにみたとき、職場での賃金体系を含めた賃金確定の交渉は「05春闘」の中心柱の一つとなり、職場内でのきびしい交渉もあり得ることを分会内で今から意思統一をしていく必要があります。

<2>「05春闘」のとりくみでは、新年度4月からの賃金確定が3月末までに妥結できない場合も生じます。このような場合であっても、焦らずに職場の団結を最大限に守りあい、ねばり強く労使交渉で確定させていきます。仮に新年度4月の賃金支給日までに労使で合意できない場合は、従来の賃金の「暫定払い」を要求し、「暫定払い賃金」の精算は「期末勤勉手当」の支給時におこなわせていきます。

「期末勤勉手当」を「暫定払い」の精算をふくめ調整財源とした場合は、若年・低賃金所得者を基礎にして、“累進制”や“一律定額部分の支給”を増やすことによって、年間収入で見た場合に若年者を配慮した「期末勤勉手当」支給を検討していきます。

IV、財源縮小の下での賃金体系・闘争のあり方について

<1> 大阪地方本部としての賃金体系のあり方については、「04年国民春闘方針」や「05年秋年闘争方針」を踏襲していきます。この点で、賃金体系は、「福祉職給与表」を基礎とした『通し号俸』(1級〜5級までのワタリを含む)を検討し発表していきます。

 ただし、この『通し号俸』(1級〜5級までのワタリを含む)はあくまで「モデル賃金表」であり、今日の経営をとりまく条件から、実行のむずかしい法人もおおく出てくることも予測されます。その場合は、「モデル賃金表」をもとにそれぞれの法人の条件にあったものを各分会で自主的につくり、労使協議の組合側の素材としていきます。

<2> この間、大阪地方本部での賃金検討委員会をすすめる中で、同友会を軸にして「財団」「コスモス」「いずみ野」の各3法人が、賃金問題・賃金体系等について意見交換(交流)を行っていることが明らかになっています。この点では、大阪地方本部として上記の3法人にたいし集団交渉(懇談会)を申入れ、3法人と交渉・懇談することにより、同友会に参加する法人・職場の「賃金相場」づくりにつながるとりくみを検討していきます。

3法人との間では、少なくとも非正規職員の「時間給」水準の引き上げや職場最賃(初任給水準)の確立、等々を目標にしていきます。

集団交渉(懇談)の実現をめざす場合、経営体自らが自発的に集団を形成し組合に対置することは自然発生的には期待できません。労働組合という経営外からの強い働きかけがあってこそ、「集団交渉(懇談会)」は成立するものです。この点では、大阪地方本部として3法人に対し懇談を申し入れるとともに、それぞれの分会から経営に対し「集団交渉(懇談会)」に応ずるようにはたらきかけることが重要な課題となります。また、仮に3法人との懇談が成立し、その内容を他職場に反映させる場合においても、それぞれの個別労使関係だけで実現することはむずかしく、組合員・分(班)会が大阪地方本部に強く結集し、組合の社会的力の発揮なしには他職場に波及させることはできません。
この点で、すべての組合員が何らかの行動に加わるような「福保労大阪地方本部05国民春闘」の検討と、「05国民春闘」そのものを根本から見直し労働運動そのものを活性化させていく課題の重要さはいちだんと増してきています。「福保労大阪地方本部05国民春闘」は、労働運動全体の活性化と結びつけた方針案を検討し問題提起を準備していきます。

以上


2005年2月  日
社会福祉法人 ○○○会
理事長 ○○ ○○殿
全国労働組合総連合
議長  熊谷 金道

05春闘にあたっての「全労連統一要求書」(案)


 事業の健全な発展と従業員の雇用と生活を守るため、努力されている貴職に心から敬意を表します。

全国で130万人の労働者が加入している全国労働組合総連合(略称・全労連)は、2005年春闘に当たり下記の項目について統一して養成をおこないます。誠意を持って検討され、積極的な対応をはかれることを申し入れます。

 政府や日本経団連は、「景気は回復した」と強調していますが、一部の大企業はともかく、中小企業や国民にとってはとても実感できないのではないでしょうか。中小企業をめぐる環境は依然として厳しいものがあり、労働者の雇用や生活にも改善の兆しか見えていません。医療や年金、雇用保険料のあいつぐ引き上げ、消費税の増税や定率減税の廃止の動きも、中小企業の経営と労働者の生活に重くのしかかり、不安を増大させています。

 全労連は、こうした原因は国民に耐え難い痛みを強いる「小泉構造改革」や大企業の横暴にあると考え、春闘ではこれに立ち向かう運動にとりくむ決意です。貴職と全労連には、経営者と労働組合という違いはあるものの、中小企業経営と労働者の生活安定をめざす立場は共通していると確信しています。 全労連の「統一要求書」の趣旨を積極的に受け止めて、実行されることを重ねて申し入れるものです。



1.当該組合の春闘要求を検討され、指定日に誠意ある積極的な回答をおこなうこと。

2.職場の全労働者を対象に、「時間額」「日額」「月額」による企業内最低賃金協定を締結すること。すでに協定がある場合は、最低賃金額の引き上げをはかること。

3.賃金、一時金、退職金、休暇や労働者の権利について、正職員とパートなど「非正規職員」との均等待遇をはかること。

4.職場で働くすべての労働者の雇用を守るとともに、青年労働者の雇用を拡大すること。

5.労働条件の最低基準を定めた労働基準法や、労働安全衛生法などの諸法規を遵守すること。

以上


2005年国民春闘「大阪地方本部統一要求」(案)


1.賃金等の要求

<1> 賃金体系の見直しにあたっては、「能力給」や「成績給」の導入、人事考課の導入に反対します。賃金体系は原則として福祉職俸給表1級から5級を使った「通し号俸」賃金体系を要求していきます。短大卒初任給は、福祉職俸給表1級4号、163,100円を要求し、日給7,500円、時給1,070円を要求します。手当として、調整手当10%、通勤手当、扶養手当、住宅手当の支給を求めます。

<2> パート・非常勤職員など非正規職員の賃金、一時金、退職共済会加入、社会保険加入など、正規職員との「均等待遇」を計画的に実施していくことを要求します。当面、パート・非常勤職員など非正規職員の賃金を時給に換算して50円以上引き上げること。

<3> 5年前に遡り財務諸表の開示を原則に法人の将来見通しを明らかにし、職員の労働諸条件の改善と事業見通しについての協議と合意をもとに実施することを求めます。

<4> 賃金の見直しによって「現給」引き下げのおきる職員については、激変緩和の暫定措置をとることを要求します。また、これまでの公務員職員を基礎とした中途採用者の前歴換算を是正し、中途採用者の同年齢者との賃金格差の解消を要求します。

2.労働時間短縮・職員増員等の要求

<1> 経営にたいし、1週「実労35時間(1日・7時間)」と週休完全2日制の実現への努力を求めます。また、宿直・夜勤は1週1回以内とし、宿直(夜勤)明けの保障を求めます。

<2> タイムカードを設置し、通達にもとづく「使用者の労働時間掌握の義務」を守ることを要求します。時間外手当や夜勤手当などの割増賃金は、タイムカードの刻印時間通りに支給することを要求します。また、宿直手当は厚労省通知を遵守し、手当は1回あたり職員の平均賃金の時間単価1/3以上の支給を要求します。

<3> 「常勤換算」方式の導入により正規職員の非正規職員への置き換えに反対します。パート・非常勤職員など非正規職員への正当な理由のない「雇止め」に反対します。正規職員の欠員が生じた場合は、公募を原則としながらも在籍した非正規職員からの優先的な雇用の保障を求めます。

<4> 経営の努力で、最大限の正規職員の増員を求めるとともに、現行の「職員配置基準」について、当面、現行の最低基準の1.5倍化を業界世論となるように業界や行政に経営として働きかけることを要求します。また、長時間(夜間)保育加算、障害児保育加算、重度障害児加算、「虐待児対策」加算など、困難ケースや業務改善のための職員増員と正規職員配置をめざして業界や行政に働きかけることを求めます。

3.その他の要求

<1> 職員会議をもとにした民主的な職場運営と、職員の権限と責任を明確にした業務の指示系統を確立することを求めます。バザーや募金活動などの自主活動は、職員の自主性を尊重してノルマを課したり、強要しないことを求めます。ましてや、職員の業務成績評価にすることには反対します。

<2> 経営として職員の健康管理に責任をもち、最低年1回の「職業病」特別検診を含む健康診断の実施を求めます。職員50人以上の職場では、法律にもとづいて「労働安全委員会」の設置を求めます。また、設置義務のない職場においても極力「労働安全委員」を配置し、「大阪健康安全センター」の開講する『労働安全セミナー』への委員の職務免除の参加と有償保障を要求します。

<3> 経営者として、イラクからの自衛隊撤退、日本国憲法と「国連中心のイラク復興支援」の立場にたってイラク支援をおこなうことを政府に要求するとともに、憲法9条、25条など憲法改悪反対の運動を利用者、労働者とともにすすめることを要求します。

<4> 2005年度の「介護保険見直し」に連動する社会福祉制度の再度の大改悪に反対していきます。また、「障害者福祉改革のグランドデザイン」の導入、民間保育所の一般財源化、地方分権にともなう補助金・交付税削減に反対し、各団体との共同を展開することを要求します。